2020年12月24日

どのマスク?

 ナンパしたOLは、レースのマスクをしていた。「かわいいマスクだね」と言うと、彼女は素顔を見せてくれた。
「このマスクが好きなの?」
 マスクを外すと、隠されていた部分は僕のタイプではなかった。口ごもっていると、彼女は物陰に走っていった。しばらくして、好みのタイプの美女が近づいてきた。
「こちらの方がいいかしら」
 背丈も服装も声までも同じなのに。彼女は会う人ごとに、ゴムマスクを取り替えているらしい。逃げだそうとすると、恥をかかされたと言って腕をつかまれた。
「面の皮をはがしてやる!」
 互いにつかみ合いをしていたら、二人ともゴムマスクが外れてしまった。若い男女だったはずが、初老の男女の取っ組み合いになっていた。


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2020年10月07日

マスクもいろいろ

 甘いマスクで女性をとろかすのは、イケメン俳優の特権である。普通の人間に関係があるのは、鼻と口を覆うマスクが関の山だが。ただ、感染予防には大して役に立たない。ウイルスの大きさは繊維の穴の五十分の一だから、出入り自由である。マスクの内側は温かく湿っているから、ウイルスが繁殖しやすく、かえって感染しやすくなるほどだ。
 ただ、三枚目のあなたでも、イケメン俳優のマスクをかぶれば、美しい女性の心を射止められるかもしれない。とはいえ、顔にかぶるゴムマスクだと、服を脱いだときにばれてしまう。最近は全身をおおう物までできた。魅力的な女性をホテルに誘ったら、中身はハゲのおじさんなんてこともあるかもしれない。


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2020年09月28日

何度もお葬式

 大勲位を授かった政治家が亡くなったと報じられた。記憶のいい人が、昨年亡くなっていたという記事を持ち出した。
「いってえ何度亡くなったら気が済むんだ。こっちは一回の葬式出す金もねえのに」
「影武者が大勢いるんだよ。徳川家康だって、大坂夏の陣で討ち死にしたのに、双子が代わりをしてたっていうじゃないか。現代じゃそっくりさんを探したり、整形手術をしたり、本人の顔のお面をかぶったりしてる。お偉方のクローンだったら、遺伝子検査しても分からないだろうよ」
「でも、何度も葬式出す理由にはならねえよ」
「本物が亡くなっても、影武者がなりすましてるんだから、辻褄を合わすためには、そっちの葬式も出さなければならないんだよ」


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