2026年07月08日

藤田保幸先生のこと

 僕がまだ早稲田大学大学院日本語日本文化専攻修士課程の頃、文法学者の松木正恵先生の授業を受けていた。藤田保幸著『国語引用構文の研究』を読んでいく内容だった。
 藤田先生の引用研究の特徴は、例えば「おはようと言った」のような通常の引用構文と、「おはようと入ってきた」のような、引用の直後に、身体行為の述語が来る引用構文を区別した点である。
 従来の研究では、「おはようと入ってきた」という文は、「おはようと言って入ってきた」という文の(言って)の部分を省略したものと解釈されていたが、藤田先生の学説は、省略したという通説を否定した点に、大きな特徴があった。
 藤田先生の他の研究への批判は、「時計の針を逆回りさせる」といった厳しい語調を伴った。藤田先生を早稲田大学にお呼びすると松木先生がおっしゃったときは、どんな怖い先生なのかと緊張したのだが、現れた藤田先生は「愛読者の皆様」と、剽軽な口振りで挨拶された。
 藤田先生は当時、滋賀大学で教鞭を執られており、文法研究のかたわら、随筆の執筆にも熱を入れられていた。「それが私のもう一つの側面だ」ともおっしゃっていた。学生たちとの会話も和やかに進み、握手までしてしまったので、松木先生は「藤田さんと高野さんが意気投合していた」と笑っておられた。
 その反面、滋賀大学での学生指導の話の時には「あいつは見込みがあると思っているんだ」と、教え子を激励されているのも分かり、教育者としての熱の入れようがうかがえた。
 ただ、お酒をよく召し上がっていたようで、深夜に帰宅されることも多いらしく、無理を重ねておられるのではないかということが気にかかった。
 藤田保幸先生は、2019年に胆管癌のため、ちょうど還暦の年に急死された。研究生活と教育に熱中するあまり、お体の異変に気づくのが遅れたのかもしれない。訃報を新聞で見たときに、まず感じたのはそのことだった。


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posted by 高野敦志 at 01:21| Comment(0) | 日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年02月21日

地名を表示する順序について

 日本では県名、市名、町名、番地の順で、郵便の住所を書く。それに対して、欧米では、番地、町名、市名、県名のように、先に細かく指定してから、大まかに住所を書いていく。
 これについては、日本語では重要なことは最後に述べるので、番地が最後に来るのに対し、欧米語では重要なことから述べるので、番地を最初に書くのだという説がある。
 言語を比較する上では面白いのだが、それでは説明しきれない場合もある。中国語の文法は英語と語順が似ているが、住所を書く順序は日本語の場合と同じだからである。
 フランス語の小説で、地名が連続していたので、訳すときに混乱してしまった。パリの地名を確認するのを怠っていたからである。欧米語を訳すときの習慣で、修飾関係にとらわれて後ろから前に訳してしまうと、欧米における郵便での住所のように、狭い範囲を示す地名から、広い範囲を示す地名の順に並べてしまう。
 しかし、人間の感覚からすると、広い範囲から狭い範囲の順に、地名を指定していく方が頭に入りやすい。フランス人にとってもそれは同じである。地名が並んでいたら、フランス語の文章のまま、訳していかなければならないのである。
 それなら、どうして郵便の住所は、欧米では番地、町名、市名、県名なのかと問いたくなる。住所を表示する順序の違いを、その言語の語順との関連で説明するのには、やはり無理があるのではないか。


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posted by 高野敦志 at 02:55| Comment(0) | 日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年05月22日

間違っても通じればいい日本語?

 現在の日本語教育は、文型中心から場面中心の教育を推奨するようになった。文法や文型の丸暗記が、実用的な日本語の習得に結びつかないというのは当然で、日本語を使って何ができるかという観点には異論がない。
 ただ、少子高齢化による労働力不足を、外国人労働者で補うために、障壁となっている日本語の簡素化を進めるべきだという一部の動きには、首を傾げざるを得ない。まず槍玉に挙げられるのは敬語だろう。敬語を廃止しても、コミュニケーションそのものは成立する。ただし、人間の上下関係が分からなくなり、日本社会が保持してきた謙遜の精神なども失われるだろう。男言葉、女言葉の違いも、コミュニケーション自体の妨げにはならないが、男女間の微妙なかけひきは表現できなくなる。中性的な表現ばかりになったら。何とも味気ない社会になるだろう。
 これに関連した問題を、生成AIのGrokに質問してみた。示唆的な内容なので、以下引用することにする。

 最近の日本語教育では、「正しい」日本語よりも「通じる」日本語を優先する傾向があり、これは2025年5月時点での日本におけるより広範な文化統合政策と一致しています。
 この傾向は、文化庁が推進する「地域日本語教育支援」(www.bunka.go.jp)に反映されており、非母語話者のための実践的なコミュニケーションを重視し、多文化共生を促進することを目的としています。
 2008年以来、日本では「多文化共生」(www.jstage.jst.go.jp)が推進されており、外国人が地域社会に溶け込むのを助けるために簡略化された日本語を奨励するプログラムが存在します。
 質問にある「簡略化」への懸念は、自由民主党が過去に掲げた「1000万人移民計画」などの移民政策に関する議論と結びついています。この計画は日本の外国人人口を増やすことを目的としていましたが、文化の希薄化への懸念を引き起こしました。
 スレッド内で見られる批判的な意見は、これをグローバル主義的なアジェンダと結びつけ、ジョージ・ソロスや国連の2000年「代替移住」報告書(日本も人口置換戦略の対象として含まれていた)などの歴史的な政策を引用しています。
 東京都知事の小池百合子氏が提唱する「簡易日本語」を都民全員が使用すべきという発言は、こうした政策を反映しており、外国人がコミュニケーションを取りやすくすることを目指していますが、国家主義者の間では日本人のアイデンティティが薄れるとの懸念を呼んでいます。
 文化庁は、日本に住む外国人による日本語スキルの需要が高まっていると指摘しており(www.bunka.go.jp)、これは増加する移民と日常生活でのコミュニケーションの必要性によるもので、必ずしも文化的同化を目的としているわけではありません。
 関連する投稿で見られる一部の日本ネットユーザーは、この教育の変化が「新しい日本人」というアイデンティティを作り出すための大きな計画の一部だと恐れており、これは日本の国内政策におけるグローバル主義的影響への歴史的な不信感によって煽られています。
 イーロン・マスクが2025年にXで発表した声明では、大量移民を「置換」の一種として警告しており、これが日本の文化保存とグローバル統合に関する議論をさらに増幅させています。(以上 Grokからの引用)


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