2025年05月13日

小泉八雲の「青柳物語」について

 小泉八雲の「青柳物語」は『怪談』に収録された話である。この物語の構成は、現代人からすれば奇妙である。一篇の小説として見れば、欠陥だらけのようである。
 全体は三つの部分で構成されている。能登の大名に仕える若侍の友忠が、主君の命で京の都に向かう途中、吹雪に遭って一夜の宿を請う。そこで絶世の美女青柳と出会い恋に陥る。友忠は青柳の両親の許しを得て、妻となる青柳を連れて京に向かう。そこまでは近代的な小説の体裁を取っている。
 ここで小泉八雲は、日本語の原文が一貫性が取れていないことを指摘する。そこまでで言及されていた友忠の母や、青柳の両親、能登の大名が、その後の場面に全く登場しないからである。物語の中で触れた人物を、全く登場させずに放置するのは、近代小説としては禁じ手だからである。
 物語は一転して「昔話」の様相を帯びる。侍は主君の許しを得なければ、妻を娶ることはできない。それにはまず、京の都に行って、主君から託された務めを果たさなければならないが、同行してきた青柳を、有力大名である細川氏の従者に見つけられてしまう。細川氏は友忠に、青柳を差し出すように命じる。地方大名の家来に過ぎない友忠は、命の危険を冒して、連れ去られた恋人に手紙を送る。侍女となった青柳に内通したことが露見すれば、友忠は処刑されるはずである。案の定、友忠は細川氏に呼び出される。死を覚悟して参上すると、友忠と青柳の愛に感動した細川氏は、能登の大名に成り代わって二人の結婚を許す。ウラジミル・プロップの『昔話の形態学』が示すように、困難を乗り越えた主人公はついに結婚を果たし、物語は大団円に至ったかのごとく見える。
 ところが「青柳物語」はさらに続き、結末で神話的な様相を帯びる。幸せな結婚生活を送っていた二人に、ある日突然別れの時が訪れる。青柳は断末魔の苦しみの中で、自身が人間ではなく柳の精であり、木が切られたことで死ぬと伝えて、姿を消してしまうのである。友忠は出家し、諸国行脚の雲水となる。青柳の生家を訪ねると、そこには家の跡もなく、ただ柳の老木二本と若い柳一本の切り株だけがあった。これによって、青柳と出会ってからの出来事は、すべて幻であったという仏教的な結末となるのである。
 この世が夢に過ぎないとしたら、小説の中で触れた人物を、その後全く登場させずに放置するという禁じ手も、欠陥とはならないのである。このような物語の不思議な構成が、小泉八雲の興味を引いたのではないか。


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2025年04月11日

小説「五分の魂」(ePub)

 小学校の分校が併設された喘息病棟に、甘やかされた子供たちが、病気に打ち勝つために入所させられていた。人々の善意で運営されていた施設では、子供たちの心は屈折していた。絵本を描くのが好きな少年豊は、思いも掛けないいやがらせを受けて……。
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Gobunotamashii.epub
 
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2025年03月28日

童話と写真『茶トラのシマちゃん』(ePub)

 茶トラのシマちゃんが、兄の白い猫とともに、結婚しない兄妹と認知症のおばあさんのうちに住み着いた。ユーモラスなエピソードと可愛い写真を御覧下さい。語り手は茶トラの弟ネコですが、子供でも分かるように、やさしい表現を用いるとともに、その後のストーリーも展開させました。
 今回は我が家で撮りためたネコの写真を、本文の中に組み込みました。写真の可愛らしさと物語を比べてみるのも面白いと思います。

 レイアウトの崩れない固定レイアウトのePubなので、文字も画像化してあります。かすれて見えなくならないように、ゴシック体のフォントを使用しています。10メガあるので、環境によっては、ダウンロードに時間がかかります。
 以下のリンクからダウンロードして下さい。
shima.epub

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