2026年01月25日

朝ドラの「ばけばけ」裏話

 NHKの連続テレビ小説「ばけばけ」は、ラフカディオ・ハーン、日本名小泉八雲と、妻節子をモデルにしたドラマである。『怪談』や『日本の面影』などの著書は、日本に対する深い愛着から生まれたものである。日本の怪談を英訳したというよりは、妻節子が語った言葉を、自身の想像力で膨らませ、目に見えるイメージで英語に定着させたものである。
「ばけばけ」の脚本は、ふじきみつ彦氏が担当している。NHKのお偉方から話があり、いくつかの題材の中から、書くドラマを選ぶように言われた。そして氏が選んだのが、小泉八雲と妻節子をモデルにしたドラマだった。
 当初、氏は時代劇を意識しすぎて、非常に硬い内容になってしまったという。どうも面白くないというので、一旦提出した脚本を年末に書き直して、喜劇風のドラマに仕立て直したのだそうだ。最初の脚本のままだったら、放送されているような、ユーモア豊かなドラマになったかどうか。「自分が面白いものでなければいけない」という信念が、数週分の脚本を書き直す原動力になったのだ。
 一方、ドラマの主題歌『笑ったり転んだり』は、松野トキ役の石あかりと、レフカダ・ヘブン役のトミー・バストウが歌っているものとばかり思っていたが、実は、歌っているのはハンバート ハンバートの男女デュオだった。主題曲を作るに当たって、「ばけばけ」の脚本は読まずに、小泉節子の「思い出の記」を参照したのだそうだ。
「ばけばけ」は小泉八雲と妻節子をモデルにしているが、必ずしも史実に忠実なわけではない。トキのモデル節子は、小泉家に生まれ、稲垣家に養女に出されたが、先夫と離婚したのち小泉家に復籍している。
 ドラマでは結婚したトキとヘブンは、松野の養父母と同居している。結婚の翌年、八雲と節子は熊本に移住し、神戸、東京へと居を移していく。ハーンは東京帝国大学の英文学の講師となり、辞職したのち、早稲田大学で教鞭を取り始めてほどなく、狭心症により54歳で亡くなった。そのとき、妻節子は36歳だった。
 恐らく、ドラマでは繰り返される転居は描かれないだろう。ヘブンが死の床で、トキと一緒になったことを喜び、松江の町と松野の養父母を懐かしみ、トキとの愛を確かめる辺りで終わるだろう。死んだところまでは描かないのではないか。


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2026年01月15日

翻訳と生成AI

 フランス革命以前のパリを舞台にした小説を翻訳していて、prévôtという言葉に突き当たった。何と訳したらいいのだろう。クラウン仏和辞典には、裁判官、憲兵隊隊長、長官などの訳語があるが、どうもしっくりこない。王政時代のフランスも、江戸時代の日本も、司法権と行政権が分離していなかった。だから、代官あたりの訳語がいいだろうかと思った。フランス国王から、司法と行政を代わりに任されていた役職だからである。
 ところが、舞台はパリである。パリの司法と行政を任されていたのなら、町奉行あたりの方が的確かもしれないと思った。だとすると、パリ町奉行と訳そうとも考えた。しかし、prévôtはフランス各地に置かれていた役職で、幕府の直轄地の江戸、京都、大坂、駿府だけに置かれていた幕府の高級官僚とは異なる。prévôtを町奉行と訳すと、フランス各地にも奉行がいたのかという類推が働いてしまう。フランス国王から司法と行政を任されていた役職としては、代官が最適という結論に至った。
 実は、訳語の選定にあたっては、生成AIのChatGPTと議論を繰り返した。フランス革命以前のフランスの政治について、普通のフランス人に聞いても分からない。フランスの歴史学者に聞かなければ分からない。しかも、日本の歴史にも通じていて、日本語も達者となると、稀有な存在としか言いようがない。それを見事にこなす生成AIは、翻訳での訳語に困ったときの良き相談相手なのである。


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2025年12月31日

島崎藤村の『破戒』について

 この物語のクライマックスは、小学校教諭の瀬川丑松が、父の戒めを破って自身が穢多の出身であることを告白する場面である。ただ、丑松は尊敬する猪子蓮太郎にだけは、自身が穢多であることを告げようとして果たせず、自身が穢多であるという噂が広がると、猪子の著作を古本屋に売り払っている。
 丑松が生徒の前で告白する決心がついたのは、猪子が殺害されたからだった。自身の身分を隠しきろうとした後ろめたさがあったからこそ、猪子の死が引き金となって、告白に至ったのである。出自を恥じない猪子に共感して、自らの身分を明かしたわけではない点に、丑松の人間的な弱さが感じられる。
 この作品はドストエフスキイの『罪と罰』の影響を受けているという。ラスコーリニコフが老婆を殺害したのに対し、丑松は穢多の身分を告白して社会的な自殺をした。ラスコーリニコフの魂を救ったのは娼婦のソーニャであるのに対し、丑松の心の支えとなるのは、養父である僧侶に迫られて寺を飛び出すお志保である。また、二つの作品の類似点としては、会話による議論が物語の展開に大きな役割を担っている点である。
 なお、物語の構造として惜しまれるのは、クライマックスである告白の後、丑松が小学校を去るところで止めておけば、余韻が残って、読者の感動が心にとどまったのに、大衆文学がよくやるように、その後の丑松がテキサスに移住することにまで言及している点である。これは本格的な文学には不慣れな明治の読者に対する、藤村なりのサービスなのだろうが。


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