「ばけばけ」の脚本は、ふじきみつ彦氏が担当している。NHKのお偉方から話があり、いくつかの題材の中から、書くドラマを選ぶように言われた。そして氏が選んだのが、小泉八雲と妻節子をモデルにしたドラマだった。
当初、氏は時代劇を意識しすぎて、非常に硬い内容になってしまったという。どうも面白くないというので、一旦提出した脚本を年末に書き直して、喜劇風のドラマに仕立て直したのだそうだ。最初の脚本のままだったら、放送されているような、ユーモア豊かなドラマになったかどうか。「自分が面白いものでなければいけない」という信念が、数週分の脚本を書き直す原動力になったのだ。
一方、ドラマの主題歌『笑ったり転んだり』は、松野トキ役の石あかりと、レフカダ・ヘブン役のトミー・バストウが歌っているものとばかり思っていたが、実は、歌っているのはハンバート ハンバートの男女デュオだった。主題曲を作るに当たって、「ばけばけ」の脚本は読まずに、小泉節子の「思い出の記」を参照したのだそうだ。
「ばけばけ」は小泉八雲と妻節子をモデルにしているが、必ずしも史実に忠実なわけではない。トキのモデル節子は、小泉家に生まれ、稲垣家に養女に出されたが、先夫と離婚したのち小泉家に復籍している。
ドラマでは結婚したトキとヘブンは、松野の養父母と同居している。結婚の翌年、八雲と節子は熊本に移住し、神戸、東京へと居を移していく。ハーンは東京帝国大学の英文学の講師となり、辞職したのち、早稲田大学で教鞭を取り始めてほどなく、狭心症により54歳で亡くなった。そのとき、妻節子は36歳だった。
恐らく、ドラマでは繰り返される転居は描かれないだろう。ヘブンが死の床で、トキと一緒になったことを喜び、松江の町と松野の養父母を懐かしみ、トキとの愛を確かめる辺りで終わるだろう。死んだところまでは描かないのではないか。
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