2024年12月14日

森鴎外の「阿部一族」

 この小説を読むのは、二度目か三度目である。名誉が武士のすべててあり、恩を受けた亡君のために殉死するのは当然だという倫理が理解できなければ、鑑賞することは難しい。殉死の許しがなく死んだ阿部弥一右衛門は、亡君の御霊屋の傍らに亡骸を埋葬することを許された。
 しかし、殉死の許しを得ずに腹を切った者と、許しを得て殉死した者とを区別すべきだと、林外記が年の若い主君光尚に入れ知恵をした。弥一右衛門の受けていた禄を、兄の権兵衛のみに継がせるのではなく、弟たちにも分割させた。それによって、面目を失った権兵衛は亡君と殉死者の法要で、突如髻を切り落とした。
 それに激怒した光尚は、権兵衛を縛り首にした。切腹を仰せつけられたなら、武士としての面目は立つが、縛り首にされたことで阿部一族は主君への不平を募らせていく。それを知った光尚は、阿部一族討伐を命じるという話である。
 小賢しいことを進言した林外記と、深慮を欠いた若い主君光尚の処断が、細川家の重臣だった阿部一族を、皆殺しにしたのである。 鴎外は史伝のように、淡々と史実を書き連ねていく。視点人物の登場しない客観的な視点で描いているので、読者も心を揺さぶられることなく、冷静に事実を受け入れるしかない。


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posted by 高野敦志 at 01:10| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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