2022年08月30日

キツネみたいなサブ(3)

 サブがもらわれてきて、二年ほど経った頃だ。どうも様子がおかしい。時々苦しそうにあえいでいるので、母と僕は一緒に、休み休み歩かせながら、動物病院に連れていった。初老の獣医はサブの頭を撫でながら、いい犬だと言った。毛並みがきれいだし、温和な性格で、吠えたり泣き叫んだりもしない。
 これはフィラリアですねと言って、獣医はガラス瓶にたくさん詰められた、白いミミズみたいな虫を見せてくれた。蚊に刺されることで、犬の血管に入り込み、成長して心臓に詰まると、宿主の犬を殺してしまうのだ。
 手術するって方法もありますが、あとは生きられるだけ生かすんですね。今だったら大金がかかっても、犬猫の命を救うのだろうが、当時は動物を手術するなんて、金持ち以外には考えられなかった。サブの場合も、成り行きに任せることになった。
 数週間後、サブがひどくあえいでいるので、獣医に往診に来てもらった。注射を打ってくれたが、一時凌ぎに過ぎなかった。今夜が山かもしれないと言うので、獣医に預かってもらうことになった。車の荷台に乗せられたサブは、寂しそうな目でじっとこちらを見ていた。これが最後の別れになることに、本能で気づいていたからだろう。


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posted by 高野敦志 at 01:00| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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