「女を買いにくる観音さまってわけね。でも、明日の晩には、他の仏さまと床を共にしてると思うわ。隔てがあってはならないのよ。すべての女に情けをかけよっていうのも、御仏の有難い教えなんじゃないの?」
ぼくはますます気に入って、女の腰を抱き寄せると、脇腹を密着させた。この女はこちらの本性を見抜いている。ぼくは箍(たが)が外れてしまったのだ。魔物に取り憑かれたかのように、ラサの街を徘徊する自分が見える気がした。
「図星でしょ」
女は慣れた手つきで、ぼくの肩に手を回した。夜が白みつつあるのを忘れて、欲望の任すまま、二匹の蛇のように求め合った。ふしだらを信条とするこの女に、ひたむきな美しさを感じた。その後、何回かこの女と情交を重ね、互いに関心が薄れると別れた。ぼくは記憶にとどめるために、一篇の詩を書いた。
馴染みとなったこの女は
狼の血を引く生まれだ
肉と肌に満たされるや
丘に向かって駆けていく
(つづく)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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ラベル:チベット,ラサ,ダライラマ六世

