2019年02月21日

死後の会話

 二十一世紀も半ばになると、死期が迫った老人は、自身の頭脳を電子データとして保存できるようになった。これで夫に先立たれた妻も、モニターを通して夫と会話が楽しめるというわけだ。
 ある日、老夫婦はデータを保管するため、量子コンピューターを購入することにした。
「わしは最先端の機種を買うからな」
「あら、あなたには安いので十分よ。どうせ一度に一つしか作業ができないんだから」
「誰がこんな口の悪い婆さんと、死んでからもお喋りなんかするかね」
「でも、あなた、そんな憎まれ口叩かない方がいいわよ。コンピューターを初期化することだってできるんだし、私がスイッチを入れなければ、あなたはお墓の中から出てこられないんだから」


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:36| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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