2025年01月23日

石原慎太郎の「灰色の教室」

 主人公義久が通う高校は、半ば学級崩壊している。生徒たちは勉強などする気はなく、教師もお座なりの教え方をしている。授業中だというのに、遊んだり弁当を食べたりしている。
 あるとき、クラスメートの嘉津彦が自殺未遂をする。生きることが死ぬほど退屈で、そのために睡眠薬による自殺を繰り返す。一方、義久は女遊びを続けるうちに、年上の女性美知子との間に、肉欲ではないものを見出す。エネルギーが有り余って、それを何に向けたらいいか分からず、女性を性のはけ口としか思っていなかったのが、子供ができたことで、義久の意識にも変化が現れる。
 物語は嘉津彦が三度目の自殺未遂に失敗し、死の恐怖を味わったことで、生きたいと思うようになり、美知子との子を堕胎させようとしていた義久も、結婚して子供を育てることを考えるようになる。エネルギーを何に注ぐべきか分からず、非行に走っていた義久と、生きる意味を見出せず、退屈な余り自殺未遂を繰り返していた嘉津彦が、ようやく大人への第一歩を踏み出すところで、物語は終わると思った。
 しかし、予定調和的な終わり方を、作者は好まなかった。美知子が階段を踏み外し、胎児を流産させたことで、義久は父親にはなれなかった。義久が美知子を哀れに思い、愛情を深めていくのか、胎児が死んだことで美知子と別れるのか、結末が分からぬまま、読者は闇に投げ出される。想像力が働くスペースとしての闇に。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 00:22| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする