あるとき、クラスメートの嘉津彦が自殺未遂をする。生きることが死ぬほど退屈で、そのために睡眠薬による自殺を繰り返す。一方、義久は女遊びを続けるうちに、年上の女性美知子との間に、肉欲ではないものを見出す。エネルギーが有り余って、それを何に向けたらいいか分からず、女性を性のはけ口としか思っていなかったのが、子供ができたことで、義久の意識にも変化が現れる。
物語は嘉津彦が三度目の自殺未遂に失敗し、死の恐怖を味わったことで、生きたいと思うようになり、美知子との子を堕胎させようとしていた義久も、結婚して子供を育てることを考えるようになる。エネルギーを何に注ぐべきか分からず、非行に走っていた義久と、生きる意味を見出せず、退屈な余り自殺未遂を繰り返していた嘉津彦が、ようやく大人への第一歩を踏み出すところで、物語は終わると思った。
しかし、予定調和的な終わり方を、作者は好まなかった。美知子が階段を踏み外し、胎児を流産させたことで、義久は父親にはなれなかった。義久が美知子を哀れに思い、愛情を深めていくのか、胎児が死んだことで美知子と別れるのか、結末が分からぬまま、読者は闇に投げ出される。想像力が働くスペースとしての闇に。
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en
X(Twitter)
https://twitter.com/lebleudeciel38
Telegram
https://t.me/takanoatsushi
GETTR
https://gettr.com/user/takanoatsushi

にほんブログ村

人気ブログランキングへ
ランキングはこちらをクリック!
X(Twitter)、facebookでの拡散、よろしくお願い致します!