2024年07月11日

豪農の屋敷が博物館に(3)

 最も素晴らしかったのは大広間で、戸を取り払った縁側に向かうと、池や大岩、小さな滝が並ぶ日本庭園が、巨大な生きた絵のように広がる。京都の禅寺か、大名屋敷にいるかのようだ。時が経つのを忘れて、しばらく見惚れていた。わざわざ山深くに足を踏み入れなくても、この庭を眺めているだけで心が癒される。
 これに匹敵する日本庭園は、禅寺以外では、甲府の常磐ホテルぐらいだろう。皇室御用達のホテルで、将棋の竜王戦も行われている。そういえば、伊藤家のこの大広間は、今上天皇と皇后も訪問されたようで、壁に写真が飾られていた。
 伊藤家は初代の文吉が、18世紀半ば宝暦の頃の人で、八代目の文吉が今世紀の初頭まで生きていた。第二次世界大戦後、GHQによる農地改革があり、接収された屋敷全体が取り壊され、集合住宅になるところだった。日本文化に理解があるラルフ・ライト中尉と、七代文吉の同意により、博物館として保存されることになったのである。(つづく)


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posted by 高野敦志 at 00:00| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする