あるとき、父親が家を出たままで、母親も育児放棄をしている恵子と久美子の姉妹と知り合う。電気も水も止められてしまったため、姉の恵子は万引きをして食いつないでいる。ただ、可哀想だと見られることに、恵子は我慢できない。
岩切自身も妻との間にすきま風ができて、妻子と別居している。水道局の仕事として、未納者の水道を止める仕事に、葛藤を抑えきれなくなっている。感情を激発させた恵子の姿を見て、岩切は恵子の家の水道栓を開き、渇水で止めていた公園の水道から水をまく。これはカーニバルのようなもので、一時的に現実の秩序が放棄されるに過ぎないのだが。
ただ、すぐに岩切は取り押さえられる。留置場に収監され、退職するのを条件に釈放される。恵子と久美子の姉妹は、児童保護施設に移動させられる。ある日、渇水が終わってなみなみと水が張られたプールに飛び込む。岩切は息子を連れて海に行くことになる。さわやかな印象で映像は終わる。
一方、河林満の原作は、重苦しい雰囲気に包まれた小説で、結末が映画とは全く異なる。恵子と久美子の姉妹は、鉄道で自殺してしまうからである。「文學界新人賞」の審査員をしていた中上健次は、どうして幼い姉妹を死なせてしまったんだと怒ったという。
監督の高橋正弥は、姉妹が飛び込む行為を、悲惨な鉄道自殺から、念願のプールへの飛び込みにすり替えることで、本来この小説が持ち得た感動を、観客に伝えることに成功している。
追記
高橋正弥の映画『渇水』はAmazonプライムで見られる。
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en
https://twitter.com/lebleudeciel38
Telegram
https://t.me/takanoatsushi
GETTR
https://gettr.com/user/takanoatsushi

にほんブログ村

人気ブログランキングへ
ランキングはこちらをクリック!
Twitter、facebookでの拡散、よろしくお願い致します!