2024年01月06日

野坂昭如の「四畳半裁判を語る」(2)

 雑誌『面白半分』の編集長をしていた野坂昭如は、文語文で書かれたポルノを、現代人にも紹介したくて、雑誌に掲載することにした。大手出版社にも問い合わせて大丈夫だろうと言われたが、猥褻文書販売の罪を問われ、野坂は罰金10万円、出版元の社長は15万円を科された。
 猥褻が何かが問われた裁判だったが、「四畳半襖の下張」は以前出版した人間が有罪の判決を受けているので、判例に従って有罪とする判決が確定した。
 猥褻文書として有罪が確定した書物としては、D・H・ロレンス作 伊藤整訳の『チャタレー夫人の恋人』、サド侯爵作 澁澤龍彦訳の『悪徳の栄え』などもあるが、ポルノ雑誌やポルノビデオが氾濫する現代では、小説で公序良俗が冒されることはなくなった。特に「四畳半襖の下張」は古典文法を知らなければ理解できない。電子書籍として「四畳半襖の下張」が新潮社から刊行されたのも、公序良俗の意識の変化によるものだろう。
 「国家存亡の危機に関わるような、そういった危険な文章を書くということは、物書きとして一番名誉なこと」だという思想が、野坂の意識にはある。一度は刑務所に入れられるのが一流の文学者だというフランス人の考えと共通する。反権力の意識というものが根底になければ、いい作品は書けないという姿勢である。


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posted by 高野敦志 at 01:16| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする