本書で興味深く感じられたのは、鎌倉新仏教への密教の影響について、詳しく記述されている点である。従来の説明では、浄土宗の法然、浄土真宗の親鸞、臨済宗の栄西、曹洞宗の道元、日蓮宗の日蓮など、鎌倉新仏教の祖師は、仏教の総合大学だった比叡山で学んだことが挙げられる。天台宗における浄土信仰が法然や親鸞に、止観が栄西や道元に、法華経を至上の経典とする思想が日蓮に、影響を与えたと見るわけである。
それに対して、正木氏は鎌倉新仏教に対する密教の影響を指摘する。親鸞が得た夢のお告げは、救世観音が女性となって、女犯の罪を免れさせて、極楽に往生させるというものだが、真言密教の『覚禅抄』の偈文の内容とほぼ同じだという。
栄西自身は天台密教の一流派の祖でもあり、臨済宗の天龍寺は、後醍醐天皇と護良親王の鎮魂のために建てられた寺院である。臨済宗の朝の勤行で唱えられるのは、楞厳呪という陀羅尼である。
道元自身は只管打坐を主張したとされるが、第四祖の瑩山紹瑾は、民衆への布教のために祈祷を取り入れた。修験道との関係も深い。恐山の円通寺も、豊川稲荷の妙厳寺も、曹洞宗の寺院である。
日蓮自身、虚空蔵求聞持法という密教の修行を行った。日蓮が描いたとされる大曼荼羅には、法華経を護持する神々とともに、不動明王、愛染明王という密教の忿怒尊が、梵字で書き込まれている。法華経自体に、陀羅尼が収録されており、日蓮宗で用いられる「曼荼羅」「即身成仏」という言葉も、真言密教で用いられてきた用語なのである。
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