2023年03月31日

稲垣直樹の『ヴィクトル・ユゴーと降霊術』

 昭和生まれの世代は、子供の頃、こっくりさんというのをやったことがあるだろう。こっくりさんは白紙に、「男」「女」に漢数字、五十音のひらがな、それに鳥居を描き、十円玉の上に、複数の者が指を置く。すると、指が勝手に動きだすので、それを記録していく。これがお稲荷さんのお使い、狐の心霊の御告げだと考えられていた。最後に鳥居の中にお帰りいただかないと罰が当たるとか言われていた。
 これは日本古来のものではなく、西洋から伝来した降霊術が日本的に変貌したものである。本来の降霊術では、不安定な三脚のテーブルが用いられる。その上に複数の者が手を置くと、三脚のテーブルの脚が、その下の安定したテーブルを叩く。それをモールス信号のように記録するというものである。
 愛娘の死を悲しみ、ナポレオン三世からの迫害を逃れて孤島にこもったヴィクトル・ユゴーは、テーブルが叩く音から御告げを聞く降霊術にはまる。質問に対する答えが肯定なら一回、否定なら二回というのは分かるが、一回ならA、二回ならB、Zに至っては二十六回叩くと想定し、フランス語の単語を構成していく。しかも、一秒間に複数回叩く音から、文章をひねり出すのであるから、難行苦行であるに違いない。
 ユゴーは亡き娘のほか、シェイクスピアやモリエールなどの文学者、ナポレオン一世や三世など、政治家の霊まで登場する記録を残している。それがユゴーの『静観詩集』などの詩作にも影響を及ぼしたという。降霊術に現れた心霊の言葉が、詩集にも現れているからである。
 ユゴーはなぜ、テーブルの叩く音を数えるという煩瑣な方法にこだわったのか。それは実際に心霊の存在を信じていたと同時に、降霊術に自身の意識が影響を及ぼすのを避けたかったからだという。
 降霊術における口寄せや、自動書記の方が、心霊の言葉を記録するには、はるかに容易な方法であるが、口寄せに関しては霊媒としての特質が必要である。また、霊媒を装った詐欺師も多い。自動書記に関しても、意識的に文章を作ってしまう恐れがある。
 現代人の多くは心霊の存在を否定する代わりに、無意識というものを想定する。降霊術でつづられた文章には、ユゴーの無意識が関わっていたというわけである。だとすると、自動書記にこだわったシュルレアリスムとの接点も見えてくる。
 ただし、シュルレアリストの自動書記は、精神病者のように支離滅裂なものが多い。詩として見られるものの多くは、後の推敲によるものである。自動筆記によって、整然とした文章が生成されることはまれである。
 ユゴーが残した降霊術の記録は、きちんとした文章の形を取っているものが多い。ただ、意味不明なものは心霊とのコンタクトに失敗したとして、排除されていた可能性が高い。また、テーブルを叩く音を、どこまで正確に数えていたかも疑問で、きちんとした単語になるように、意図せずして数え間違えることもあっただろう。降霊術がユゴーの詩作に影響を与えたとしても、詩を書くときには、神経を研ぎ澄ましていたはずで、無意識から生成された言葉が、そのまま文学作品となったわけではない。


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2023年03月30日

瞑想音声の作成

 瞑想するための誘導音声を作る場合、自分の好きな言葉が記されたテキストを選ぶ。頭の中に叩き込むことで、精神的な向上が望めるものが好ましい。単に抽象的であるより、比喩などを用いた哲学的なものがふさわしい。自分の場合は、ディーパック・チョプラの『ゆだねるということ』に収められた「七つの原理のスートラ」を選び、Audacityというソフトウェアで朗読を録音した。
 録音した音声をAudacityで開き、トラックを新しく2つ追加する。新しいトラックの1つを選択し、メニューの「ジェネレーター」はトーンに設定する。サイン波を選び、周波数を仮に240Hz、amplitude(振幅)は0.2程度にする。こちらは右からしか聞こえないようにする。
 もう1つのトラックを選択し、サイン波を選び、周波数を244Hz、amplitude(振幅)は0.2程度で作成して、左からしか聞こえないようにすれば、バイノーラル・ビートの原理により、差分の4Hzのシータ波が聴いている人間の大脳で生成されるというわけだ。
 シータ波というのは、夢見心地や入眠時幻覚を見る状態で、意識を保ちながらイメージを思い描くことができる。また、暗示にもかかりやすい。深層意識に隠れている情報にも触れられるので、思いがけないアイデアを思いついたりする。その脳波誘導の信号と、先に自身の声で録音した音声をミックスするのである。
 もしバイノーラルの信号だけの音声を持っているなら、それを利用することも可能だろう。理想としては、モンロー研究所のフォーカス15の音声のように、思考の具現化に導くような信号がふさわしい。
 ただし、作成した瞑想音声は、書物を自身で読み上げた場合でも、使用は個人に限られる。他人への配布は著作権に抵触するので、決してすべきではない。


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『バベルの図書館』をめぐって(ePub)

 アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスが選んだ世界文学全集『バベルの図書館』について、自由な形で書いたエッセイを一冊にまとめました。元の作品を読んでいなければ分からないというわけでもないので、気軽に読み流していただければと思います。
 以下のリンクからダウンロードして下さい。
Babel.epub

 iTunesからダウンロードする場合は、ミュージック→iTunes→iTunes Music→podcasts→当該のフォルダの下に、ファイルが入ります。
 IEでダウンロードした場合は、拡張子をzipからepubに変えて、下記のアプリでご覧下さい。

 ePubはiOSのiPadやiPhoneなどで読むのに適した形式です。iBooksなどでご覧下さい。Windowsでは紀伊國屋書店のKinoppy(http://k-kinoppy.jp/for-windowsdt.html)が、最も美しくePubのファイルを表示します。

 ブラウザからePubを開く場合、。Googleのchrome(https://www.google.co.jp/chrome/browser/desktop/index.html)なら、プラグインのReadium(http://readium.org/)をインストールして下さい。
 firefox(https://www.mozilla.org/ja/firefox/new/)にもプラグインのEPUBReader(https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/epubreader/)があり、縦書きやルビなどにも対応しています。
 EdgeではePubは開けなくなりました。

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。 


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