2022年11月12日

星新一の「月の光」

 人間には言葉など要らないと信じている医師がいた。拾った女の赤ちゃんを、言葉を一切使わずに、愛情を注いで部屋の中で育てていた。少女は幸せそうに見えたが、社会性を奪われた愛玩動物のようだった。
 あるとき、医師が事故に遭った。代わりに使用人が食事を持っていき、「今日は帰ってこない」と言ったが、少女には伝わらなかった。医師がそのまま亡くなると、少女も絶食したまま息絶え、魂は天に昇っていった。
 医師は少女を愛したつもりだったが、自分以外の者とのコミュニケーションの機会を与えなかったため、自立して生きる力が得られなかった。言葉を知らない点では、狼に育てられた少年と同じで、姿形は人間でも人間らしさは身につかなかったのだ。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

Telegram
https://t.me/takanoatsushi

GETTR
https://gettr.com/user/takanoatsushi

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村



人気ブログランキングへ







ランキングはこちらをクリック!


Twitter、facebookでの拡散、よろしくお願い致します!
posted by 高野敦志 at 03:35| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする