2022年11月18日

星新一の「ごきげん保険」

 N氏は日常生活での不満を訴えるだけで、保険金が下りるという契約を結んだ。野良猫で眠れないとか、砂糖入れが剥げたとか、好みの女性に無視されたとか。政治への不満による心労、年齢による若さの衰えでも保険金が下りる。ただし、保険金が下りるといっても、一件当たり百円単位では、一体何の足しになるのやら。
 対応する社員の心労は、極限に達している。それでも、顧客が毎月支払う金はかなり高いので、こまごまとした対応をしても、赤字になることはない。
 N氏は保険会社に日常生活での不満をぶちまけることで、ストレス解消をしているのである。それが満足につながっている。シュールなドラマではあるが、見ている方が心労を感じてしまった。


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2022年11月17日

星新一の「こん」

 妻が「こん」としか言わなくなった。狐憑きになってしまったとして、夫は妻に付き添って病院で診察してもらった。身体からデータを取ったところ、精神的ショックでひきつけを起こし、思考停止に陥っていることが分かった。
 注射を打つと、妻の意識が戻り、何がショックだったか明らかになった。「承知しないわよ、今度浮気したら」と妻は口走る。これで一件落着というわけだが、星新一らしいひねりがない。
 注射を打ったら、取り憑いたきつねが話し出したとか、奇想天外な展開をするのが、星新一の考えそうな世界なのだが。「こん」と鳴いたわけを放置したまま、物語を終わらせるのは、上首尾とは言えないのではないか。


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2022年11月16日

星新一の「運命」

 他人の未来が分かる男がいた。「運命予測診断所」という看板を掲げ、他人の未来を読んで、生活を立てていた。高校受験、結婚、悪夢など、相談される内容はさまざまで、よく当たると評判を呼び、多数の客が押し寄せていた。
 男は他人の未来を読むのに疲れ果てた。「俺の未来を教えてくれ」と絶叫すると、地震が起こって驚く。このドラマを見て、小泉八雲の『日本の面影』所収「占の話」を思い出した。いくら他人の運命を読むことができても、自分の未来は分からないというもので、「占師身の上知らず」という諺で、その話は締めくくられている。
 ただ、易学家の高島嘉右衛門は、占いを商売にすることを戒めていた。自身の死期も悟っていたという。未来が見える人間は、それに見合う精神力も必要である。生半可なことを口走って、金もうけしている大道易者には、自身の未来など怖くて見られないのだろう。


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