2022年11月21日

星新一の「ささやき」

 火星帰りの青年は、地球の習慣が変わってしまったのに当惑している。どのように振る舞ったらいいか分からないので、無線のイヤフォンを装着した。その場面にふさわしい態度や会話を、ささやいてくれるサービスだった。
 久し振りにバーで友人と再会した青年は、ささやきに指示されるまま振る舞うことで、すべてをうまくこなした。そこで、サービス会社に礼に行くと、指示していたのはコンピューターであることが分かった。
 それだけではない。青年の友人たちも、ささやきのサービスに従っていたからこそ、パーティーがうまくいったことを知る。もはや自由意志では行動できずに、AIの指示に従うロボットと化していたのだ。
 便利なサービスに頼ることで、人間は思考能力を退化させて、コンピューターに支配されてしまった。スマホ中毒となった人類は、その予備軍というわけだ。


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2022年11月20日

星新一の「魔法の大金」

 まともに働かず、酒ばかり喰らっていたエヌ氏は、お金に困って魔法に頼ることにした。黒魔術を研究して、悪魔を召喚する方法を試みた。
 現れた悪魔に対し、エヌ氏は壱万円札を一万枚作るように頼んだ。それを銀行に持っていき、預かってもらうことにした。行員はどこでこの大金を手に入れたかと問い質した。というのも、持ち込んだ壱万円札はすべて番号が666666だったからである。これは悪魔の数字666を重ねたものであり、エヌ氏はまんまと偽札をつかまされてしまったのである。
 物語はここで終わる。エヌ氏は紙幣偽造の容疑で逮捕されるだろう。しかも、悪魔に物を頼むということは、魂を売り渡すことである。たとえ一時的に良い思いをしたとしても、自身の魂を売ってしまえば、悲惨な最期が待ち構えているのだ。


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2022年11月19日

星新一の「桃源郷」

 無人探査機スタービジョンが、パル星探査に出かけた。人類がそのまま住める環境で、選ばれた者のリゾート地になると期待されていた。
 ところが、パル星に到着すると、薄暗い空に焼け焦げたような風景、岩蔭からは骸骨が現れた。強力な放射能が検知されたことから、核爆発が起きたことが分かった。火山弾がスタービジョンに衝突して、中継は中断されてしまった。パル星は桃源郷どころか、反ユートピアだったとして、人類によるリゾート化計画は頓挫したのだった。
 実は、これはパル星に住む宇宙人が、スタービジョンに廃墟の模型を見させ、人類による侵略を未然に防いだということだった。パル星は野山に花咲く、文字通りの桃源郷だったのだ。
 物語はここまでである。他の星からの訪問者が、善意を持つとは限らないのに、人類は地球の情報を無人探査機に搭載し、太陽系の果てまで飛ばしてしまった。これによって、人類は自らの手で侵略者を招いてしまいかねないという。
 まあ、これはこの星が球形で、宇宙にロケットを飛ばしているという前提での話だが。月や火星の映像がフェイクであることが明らかになり、宇宙そのものの存在も、理論上の仮説でしかないのが真相らしい。


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