2022年10月07日

星新一の「紙幣」

 女性は借金を返そうとしたが、子供の急病の治療費に充てる必要があり、返済を待ってくれと言う。男性は返済してもらわなければ、会社が不渡り手形を出して、一家で夜逃げしなければならなくなると言う。
 テーブルに札束を置いて話し合っていると、窓の外に二人の宇宙人が現れる。札束を見ても、それが何だか分からない。単なる紙くずみたいな物に、価値があるとも思えない。試しに札束を持っていき、宇宙船の複製機で同じ札束を作って戻ってくる。
 女性と男性は、テーブルの上の札束が二つになっているのに驚く。これは神さまからのお恵みだと言って有り難がっている。一方は複製品だから、偽札だということになる。精巧に作られているなら、偽札とは気づかれずに使えるかもしれない。外見上、全く同一だったとしたら、本物と複製した紙幣は、区別がつかないかもしれない。
 喜んでいる二人を見て、宇宙人は紙幣を大量に複製して、空中からばらまく。人間たちは大喜びするだろうと考えて。これだけばらまかれれば、偽札だということは露見するだろう。
 作者は紙幣のような紙切れに、価値を置いて人生を振り回されることの愚かしさを、風刺しているのかもしれない。また、金に裏づけられていない不換紙幣は、政府がいくらでも自由に印刷できるはずで、宇宙人が紙幣を複製しているのと、大して変わらないと言いたいのだろう。


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posted by 高野敦志 at 02:16| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする