ところが、父親は俳優のような不安定な職業の男に、大切な娘をやれないと言う。ついに、二人は心中を決意して、ホテルで毒薬を飲んでベッドに横たわる。
「ずっと一緒にいられるのね」
女はうれしそうにほほ笑む。毒薬を飲むと、抱き合ったままベッドに横たわる。ところが、しばらくすると、男はベッドから起き上がる。実は男は毒薬を飲んでいなかったのだ。俳優として、心中の場面を演じていたのである。
何でそんなことをしたのか。実は、女は不治の病に冒されており、父親は結婚を許さないことで、娘を心中という形で、最高の幸せの中で死なせてやりたかったというのだ。父親は男に心中を演じてくれたことで、約束の金を渡そうとするが、男は要らないとして拒絶する。女を愛して心中したかったことは真実であり、それまで演技だったということが、自分でも許せなかったからである。
ただ、こんな筋立て自体に、無理があるのも事実である。男は心中を装って女を死なせたとして、警察に逮捕されるはずである。心中もそんな甘っちょろいものではない。ナイフで娘が刺されるかもしれない。毒薬でも七転八倒して苦しむだろう。二人の結婚を許してやり、妻としての喜びを味合わせてから、一日でも長く生きさせてやるのが父親の愛情というものだ。所詮は作り話なんだよという批判はあるだろう。
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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ラベル:星新一,ドラマ,古風な愛,心中