2022年08月29日

キツネみたいなサブ(2)

 サブがつながれていたのは、ブロック塀に囲まれた、階段横の一郭だった。その上にトタン屋根をつけて、父が犬小屋としたのだった。夏は涼しくていいかもしれないが、冬は体を丸めても寒かったことだろう。屋外に鎖でつなぐなんて、今から思えば残酷な気もするが、当時は番犬は皆、そうやってつながれていた。
 サブにとっての楽しみは、朝夕の食事と散歩の時間だった。それ以外はブロック塀に囲まれた犬小屋の中。外はいい天気で、子供たちのはしゃぐ声も聞こえるのに、どうして薄暗い小屋の中にいなきゃいけないんだ。
 そのとき、サブはブロックの壁に、通気口が開いていることに気づいた。サブは首を突っ込んでみた。ああ、よく見える。声も聞こえる。これで日がな一日、ふさいでいることもない。そう思ったとき、首が抜けないことに気がついた。しかも、きつくて助けを呼ぶこともできない。
 サブは首かせをはめられた、罪人みたいな姿で、ブロックの穴から頭を出していた。恥ずかしいやら、情けないやらといった顔して。犬小屋の方に回って、サブの体を引っ張ろうとしたけれど、がっちりはまってびくともしない。母に助けを求めに行ったが、どうしたらいいか分からない。
 そこで、父が勤める学校に電話してもらったら、そんなことで、仕事中に電話してくるな! って母は一喝された。それでも、サブが可哀想になったんだろう。ブロックの端を、金槌で少しずつ崩していけばいいと教えてくれた。おかげでサブは、首かせの晒し者から解放された。(つづく)


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posted by 高野敦志 at 01:00| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする