サブにとっての楽しみは、朝夕の食事と散歩の時間だった。それ以外はブロック塀に囲まれた犬小屋の中。外はいい天気で、子供たちのはしゃぐ声も聞こえるのに、どうして薄暗い小屋の中にいなきゃいけないんだ。
そのとき、サブはブロックの壁に、通気口が開いていることに気づいた。サブは首を突っ込んでみた。ああ、よく見える。声も聞こえる。これで日がな一日、ふさいでいることもない。そう思ったとき、首が抜けないことに気がついた。しかも、きつくて助けを呼ぶこともできない。
サブは首かせをはめられた、罪人みたいな姿で、ブロックの穴から頭を出していた。恥ずかしいやら、情けないやらといった顔して。犬小屋の方に回って、サブの体を引っ張ろうとしたけれど、がっちりはまってびくともしない。母に助けを求めに行ったが、どうしたらいいか分からない。
そこで、父が勤める学校に電話してもらったら、そんなことで、仕事中に電話してくるな! って母は一喝された。それでも、サブが可哀想になったんだろう。ブロックの端を、金槌で少しずつ崩していけばいいと教えてくれた。おかげでサブは、首かせの晒し者から解放された。(つづく)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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ラベル:犬,柴犬,エッセイ