2022年08月24日

星新一の「処刑」

 近未来の社会は犯罪が多発し、裁判はAIにまかされている。三審制などなくなり、逮捕され、判決が出ると、すぐさま刑の執行がなされる。これは死刑判決直後に銃殺される軍事裁判と同じである。
 その社会での処刑法は、一種の島流しである。資源を採掘し尽くした赤い惑星に送られる。ロボットの姥捨て山を描いた「薄暗い星で」に似ており、死の恐怖にさらされるという点で共通している。
 正当防衛が認められず、「処刑」が決まった青年は、赤い砂漠と廃墟しかない星に放置される。ボーリングのボールのような物を一つ持たされて。ボタンを押すと一杯の水が出てくる。何回目かにボールは爆発し、「処刑」が完了すると告げられている。
 青年はその星で、白骨死体を発見する。同じボールを傍らに置いたまま死んでいる。それを見て、自身の最期が見えてくる。このボールはボタンを押すたびに、死の恐怖とひきかえに、一杯の水が与えられる。しかし、ついに爆発することなく、衰弱して死んでいくのだと。
 それを確認するために、青年は廃墟の浴槽に、ボールの水をためていく。予想通り、ボールの大きさをはるかに超える水が、浴槽にたまっていく。死の恐怖にさらされながら、死の瞬間まで生き続ける点では、地球での生活と同じだということを悟る。
 話をたどって改めて感じたのは、星新一のショートショートや、それを元にしたドラマは、ほとんどが寓話であるという点である。人物の性格を掘り下げる余地はないのである。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:10| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする