仏教は本来、悟りを得ることを究極の目的とするので、大衆の欲望をかなえることには慎重であったが、ヒンドゥー教の隆盛に押されて、各種の祈祷を取り入れたり、神々を仏教の諸尊として崇拝の対象とするようになった。
ヒンドゥー教の儀式などを取り入れ、仏教化したのが密教である。日本には天台宗の台密と真言宗の東密がある。調伏法は降伏法とも呼ばれ、陰暦で黒月、つまり満月から月が欠けていく十五日間に行う。行者は三角の曼荼羅であると観じ、忿怒尊と化して護摩を修するのである。
比叡山延暦寺を焼き討ちした織田信長を、高野山の僧侶らが仏敵として調伏護摩を焚くと、本能寺の変で信長が急死したとか、太平洋戦争でもアメリカのルーズベルト大統領を呪殺したと言われる。「公害企業主呪殺祈祷僧団」が水俣病などを起こした企業主を呪殺するため、調伏法を行ったところ、幹部の病死、事故死、自殺などが続いた。工場の前で呪詛をされたことで、精神的に追い詰められたということがあるかもしれないが、科学的な因果関係は認められない。
2015年、安保法制に反対し、脱原発を唱える日蓮宗の一部の僧侶らが「安倍首相呪殺祈祷会」を開いた。日蓮宗の祈祷というと、厄除けなどの木剣修法が行われる。かつては除霊なども行われていたようであるが、密教のような調伏は行わないようである。
その後、何ごとも起こらなかったから、「安倍首相呪殺祈祷会」は形だけで終わったと感じていた。ところが、2022年7月8日、大和西大寺駅前で安倍元首相は、山上徹也容疑者に銃撃され、殺害された。呪殺祈祷会から7年の歳月が経っており、祈祷会自体も多くの人から忘れ去られている。科学的な因果関係は、そもそも認められないのであるが、呪詛を信じる人は、たとえどれだけ時空の隔たりがあったとしても、両者に関係を認めるのである。
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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