2022年08月03日

松本清張の「私の着想法」(2)

 また『波の塔』でも、ヒロインを自殺させるため、西湖のユースホステルの横の道から、青木ヶ原の樹海に入らせることにした。溶岩のために、方位磁石が利かず、迷って外に出られないからだという。この小説は映画化されたために、青木ヶ原は自殺の名所になってしまい、花嫁衣装を着た白骨死体も見つかったという。
 実際に目にした物以外に、新聞記事がアイデアとなることもある。違法建築の取り締まりが厳しい東京で、あえて違法建築の中で殺人を犯し、違法建築を撤去することで、犯行現場を消すというトリックが用いられた。また、書道教授といった、一見犯罪と無縁である職業の人が、もし犯罪をするとしたら、どんな犯罪をするかで発想したりする。
 自身が目にした風景と新聞記事を眺めていても、なかなかアイデアに結びつくものではない。電車に乗る、蒲団や風呂の中で、無心になったときに、ふと思い浮かぶことが多いという。
 作家という職業は、満足した状態では成り立たない。悪妻に対する怒りなどが、小説の因子となり、この境涯から抜け出すために、想像の世界を作り上げることになる。その具体例として、森鴎外などが挙げられていた。
 なお、松本清張の小説作法に関しては、江戸川乱歩・松本清張共編『推理小説作法』所収の「推理小説の発想」の中でも、詳しく解説されている。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

Telegram
https://t.me/takanoatsushi

GETTR
https://gettr.com/user/takanoatsushi

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村



人気ブログランキングへ







ランキングはこちらをクリック!


Twitter、facebookでの拡散、よろしくお願い致します!
posted by 高野敦志 at 02:07| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする