小学三年生の僕にも、サブはリードをぐいぐい引くことをしなかった。勝手に走り出したり、急に立ち止まったりなんかも。しつけがされていたというより、我を主張するってことがなかったのだ。だから、僕の方が引っ張った。おい、早くこっちに来いみたいに。自分がいじめられていたから、弱い者に当たったりしていたのかな。
散歩に連れ出すと、道行く人にキツネなの? ってよく聞かれた。顔が細長くて、口の周りが黒く、全身の毛並みは稲穂のようにつややかだった。おまえはもっと、自分の容姿に自信を持って、堂々と歩いていれば良かったんだ。そうすれば、可愛いお嬢さんに見そめられただろう。毛皮のマフラーにされてしまったかもしれないが。
ただ、サブは大人しいだけの犬じゃなかった。くんくん鼻を鳴らして、妹のことを追っかけ回していた。あいつはまだ幼稚園児だったから、お嬢さんなんてもんじゃなかった。好きでもないスカートはかされて、自分の意のままにならないと、怒るか大声で泣き出すばかりだったが。(つづく)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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ラベル:犬,柴犬エッセイ