2025年01月12日

森鴎外の「山椒大夫」

 森鴎外というと、史実に忠実な余り、想像力が抑制され、史伝のような「阿部一族」や、「渋江抽斎」のような史伝そのものを書いた作家のように見えるが、その一方で「山椒大夫」のように、抒情豊かな感性に訴える作品も書いている。
 これは山椒大夫伝説をもとに、鴎外が物語化する上で必要な点は改変して作り上げた作品である。人買いに騙されて、母と引き離された安寿と厨子王の姉弟は、奴婢としてこき使われる。安寿は自らの命を犠牲にして、厨子王を逃がす。厨子王は都に上り、やがて国守となって母を助けに向かう。鴎外の作品では、盲目となった母が、安寿と厨子王を慕う歌をうたっている。国守となった息子と母の感動的な再会で物語は終わる。
 鴎外は「歴史其儘と歴史離れ」という随筆の中で、「山椒大夫」の制作の経緯を打ち明けている。山椒大夫伝説の中で、厨子王を逃がした安寿が責め殺されたのを、水辺に残された藁靴で入水したことをほのめかすにとどめた。また、都に上った厨子王が何年も父母を顧みずにいたのでは、うまい動機が求められないとして、十三歳の国守を作ってしまった。それを可能にしたのは、藤原氏の無制限な権力だとして。
 歴史小説など史実をモデルにした作品は、あまりに史実が詳細に残っている場合、想像力を展開する余地がない。小説のモデルとしては、読者の興味を呼びそうな人物で、史実が細かく残っていない場合の方が、物語化する上で都合がいい。もしくは、モデルの人物は誰かと匂わせるにとどめ、人物に別人の名前を与えて、事実よりも作品としての整合性を優先して物語を書くのである。
 鴎外は「歴史其儘と歴史離れ」の中で、歴史離れがしたくて「山椒大夫」を書いたと告白している。遠い過去の伝説なら、書かれている内容を改変しても、読者から苦情が寄せられることはない。それが幕末の志士なんかだと、手紙や証言があまりに多く残っていて、歴史離れすることは困難である。正確さを期すると、歴史其儘のルポルタージュのようになってしまう。子母沢寛の「新撰組始末記」のように。


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2025年01月08日

水原紫織の『ユダヤ教と縄文の聖人隠されてきたタブー史』に関して

 本書をよく理解するには、著者の『もう一人の「明治天皇」箕作奎吾』と、『特攻兵器「原爆」』を読んでおく必要がある。日本は幕末にイギリスの属国となった。孝明天皇は偽装崩御で皇位を放棄し、本物の睦仁親王も即位しなかったため、蘭学者箕作阮甫の孫で、イギリスに留学していた箕作奎吾が、明治天皇として即位した。
 イギリスは日本人の軍事的能力を評価し、建前としては独立しているように見せかけ、明治天皇と日本国民、鉱山採掘権を支配下に置いた。日本軍の中国侵略は、イギリスが中国国内の鉱物を支配するために、イギリス陸軍元帥である昭和天皇を操って行われた。
 原爆は日本人が開発し、昭和天皇の命令で、広島の元安川、長崎の浦上川で水上起爆により、日本人を犠牲にする形で行われた人体実験だった。そこには連合国の意思が働いていたと見るべきだが、イギリスは日本人をエジプト人の子孫と考え、現人神である昭和天皇をイスラエルの神ととらえていた。これはイスラエルを解放するために、エジプト人を焼き殺すという象徴的な意味合いが込められていたのではないか。というのも、明治以降の天皇は縄文系であり、美作騒擾で被差別民が虐殺されたことで、弥生系の日本人に積年の恨みを抱いていたからである。
 アメリカ軍の日本駐留が続いているのは、昭和天皇が望んだためである。アメリカは日本をイギリスの属国ととらえ、イギリス連邦の一つとして独立させる意向だった。しかし、原爆が昭和天皇の命令で水上起爆されたことが露見すると、自らの命に危険が及ぶ恐れがあるため、アメリカ軍が日本を支配し続けることを望んだ。それには日本がイギリスの属国であることを隠す意図もあった。イギリス陸軍元帥であることを、国民に知られることを恐れていたのだろう。
 水原氏は中国神話に登場する皇帝伏羲の故郷を、九州であると想定する。これは平田篤胤の復古神道の考えに近いが、年代から考えて、伏羲を弥生人ではなく、縄文人だと推定している。日本の中国侵略は清朝に対して開始されたわけだが、清朝は満州族の国である。漢族は被支配階級で、満州族の弁髪を強制されていた。中国の神話上の皇帝の出生地が日本列島なら、日本人が中国大陸に進出するのには、日本軍が清朝から漢族を解放する意味合いも込められていたらしい。
 ただし、これは日中同祖論という仮説を提起する。日本軍が中国大陸を蹂躙した時代には、日本側に有利に働いたかもしれないが、日本が経済的に衰退し、中国人留学生が大量に押し寄せ、日本企業やリゾート地、水源地が中国人に買い占められている現状を鑑みれば、中国の日本に対する侵略を肯定しかねない。遺伝学的に見れば、日本人と漢族には共通点が乏しい。日本人の祖である縄文人の血を引くのは、アイヌ人、琉球人、本土日本人で、海外ではチベット人が遺伝的に近いとされる。


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2025年01月04日

マーク・アレンの『マジカル・パス』

 モンロー研究所から、同書を抜粋した日本語訳とヘミシンクの信号をブレンドしたCDが出ており、自己実現や引き寄せの法則に関心がある人には、お勧めできるものである。
 著者への関心が深まったので、原書であるThe Magical Path: Creating the Life of Your Dreams and a World That Works for All を読んでみた。CDに収録されたのはごく一部で、著者が意図した効果を得るには、原書を通読した方がいいと思った。
 引き寄せの法則を使うには、実現したい未来を、ありありと思い描くことが重要なのだが、視覚化という技術は、一般人には容易ではない。それにはヘミシンクの信号で、脳波をシータ波に導くことが有効なのだが、さらに効果を高めるには、体内エネルギー、ヨーガでいうプラーナや気功でいう気の力が必要なのである。
 著者はIsrael RegardieのThe Art of True Healing: Kabbalistic Meditation and Magickで説かれる「中央の柱」の技法を紹介している。これはカバラで説かれる体内エネルギーの集結する場所を活性化して、頭頂から足の裏までエネルギーを降ろしたり、それを頭頂に引き上げたりするものである。カバラで説くエネルギーの集結点と、ヨーガのチャクラは若干の相違がある。大きな違いは、足にもエネルギー集結点を想定している点である。
 自分の場合はチャクラ瞑想や気功をやってきたので、チャクラ瞑想をした後、気功の技法でエネルギーを頭頂から、足の裏の湧泉へ流し、さらに湧泉から頭頂にエネルギーを上げることにした。体内エネルギーを高めておくことが、イメージの活性化と具現化には有効だからである。
 もう一つ重要な点は、自己実現するには、それを潜在意識に叩き込むための文、詩のスタイルで書かれたアファメーションが必要だということである。本書には多数のアファメーションが収録されているが、独自の願望を実現させるためには、自分自身で書いて、それを目につくところに掲げたり、何度も唱えたりしなければいけない。
 そのほか、魔法円や曼荼羅を使ったり、体内エネルギーを病人に向けて癒したり、太陽エネルギーを体内に入れたり、自身が星になるとイメージしたりする技法、一分ヨーガなど、さまざまな瞑想法が紹介されている。


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