2017年06月22日

ぼくはネコなのだ(46)

 それから極ネコは、かつてのぼくらのように、玄関前のプラスチックの小屋で、一日の大半を過ごすようになった。兄貴の言うには、あれでも一時は母ちゃんの連れ合いだったので、義理のお父さんなのだそうだ。
 ネコのオスにとっては、連れ子は邪魔な存在で、かみ殺してしまうこともあるんだから、それを父親扱いするのは変だと思うのだが。それを人間は「ままちち」と呼ぶらしい。ママで父親だなんて、まったく紛らわしい言い方だな。
 兄貴は億劫がって、ストーブとかいう暖かい箱の前で、居眠りばかりしている。ぼくは裏口のドアが開くと、庭に出て外気に当たることにした。寒くてびっくりするけれど、毛を奮い立たせて進めば、外を歩き回れる自由に、ネコとして生まれた喜びを感じるのだ。いくら冷蔵庫の上にのぼっても、小鳥が止まってることはないのだから。
 天気のいい日には、極ネコは日向に移動してうつらうつらしている。こちらが声をかけても、目だけ動かすばかりで、にらみつけたり声を出したりしてこない。遠くを眺めながら、昔のことを思い出してるようだった。固いえさが食べられなくなり、おばさんはやわらかい肉の缶詰を、極ネコに与えるようになった。あまりにおいしそうなので、半分食べかけた皿に顔を近づけたら、威嚇するどころか、笑ってるじゃないか。何か気持ち悪くなったけど、残りはいただいてしまった。(つづく)


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青海の白い雲(ePub)

 チベット旅行記『懐かしのチベット』の続篇です。2000年(平成12)の夏に、チベット人が居住する青海省から甘粛省にかけて旅した記録です。今回は日本人は僕一人で、中国人のガイドと運転手の三人で行動しました。『青海の白い雲』と名づけることとし、エッセイ「チベット人との語らい」を加えました。
 以下のリンクからダウンロードして下さい。
Qinghai.epub

 iTunesからダウンロードする場合は、ミュージック→iTunes→iTunes Music→podcasts→当該のフォルダの下に、ファイルが入ります。
 IEでダウンロードした場合は、拡張子をzipからepubに変えて、下記のアプリでご覧下さい。

 ePubはiOSのiPadやiPhoneなどで読むのに適した形式です。iBooksやbREADER(http://breader.infocity.co.jp/)でご覧下さい。Windowsでは紀伊國屋書店のKinoppy(http://k-kinoppy.jp/for-windowsdt.html)が、最も美しくePubのファイルを表示します。Windows8用のアプリのEPUB Reader(http://www.skyfish.co.jp/epubreader.html)でも開けますが、一部のレイアウトが反映されません。

 ブラウザからePubを開く場合、Googleのchrome(https://www.google.co.jp/chrome/browser/desktop/index.html)なら、プラグインのReadium(http://readium.org/)をインストールして下さい。
 firefox(https://www.mozilla.org/ja/firefox/new/)にもプラグインのEPUBReader(https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/epubreader/)があり、縦書きやルビなどにもようやく対応しました。

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。

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posted by 高野敦志 at 01:36| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月21日

ぼくがダライラマ?(8)

 そのとき、家の戸を激しくたたく音がした。こんなに早く! お母さんは急いでぼくに上着を着せた。別れの言葉をかわす時間もない。外には初老の役人と、貧相な顔をした牛飼い、それにヤク二頭が立っていた。
 お父さんはバター茶を飲みかけたまま、お母さんとぼくの荷物を持って出てきた。荷物を牛飼いに渡すと、お父さんはお母さんの手を握った。ぼくは不思議でならなかった。これはおめでたい門出であるはずなのに、どうしてお母さんは泣いているんだろう。また、晴れがましく迎えられるはずなのに、どうして奉公に出るみたいに、こっそり薄暗いうちに出なければならないんだろう。
 西の空を見ると、三日月がまだ沈んでいなかった。うっすらと靄がかかって、吐く息も白く濁っている。役人がヤクに乗ると、二頭目のヤクにお母さんとぼくが乗った。お父さんの顔を見ると、くやしそうに唇の端を噛んでいる。お父さんもこんなはずじゃなかったと、思ってるに違いない。華やかに飾られた輿に乗って、お母さんとぼくの出立を見送るものと思っていたんだろう。 
「すぐに帰ってくるからね」
 ぼくは励ますつもりで言ったが、簡単にはもう戻れないということを、子供ながらも感じていた。牛飼いに引かれて、ヤクが歩き始めた。山道をゆっくり下っていき、いつも羊たちが放牧されてる草地の横を過ぎていく。繰り返してることであっても、いつかは終わることがあるのを知った。(つづく)


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