2019年12月20日

替え玉

 現代の政治家は多くが操り人形です。本人が死亡した場合に備え、替え玉が用意されています。昔なら双子の兄弟やそっくりさんが務めましたが、現代では整形手術をした他人や、本人のクローンが引き継ぎます。後者は遺伝的には同じなので、大抵騙されてしまいます。替え玉が用意できない場合には、息子に鬘をかぶせて父親の服装をさせ、口ぱくでスピーカーから父親の声を流します。予定されている大きな行事などで、本人のスピーチを事前に撮影しておいた場合には、アップで顔を映すときだけ、背景と合成した映像を流します。そこまでしても死んだことが洩れるのは、今まで頻繁にテレビに出ていたのがまれになるなど、不自然な点があるからです。


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2019年12月17日

でんでん虫

 でんでん虫は虫にあらず。貝でありながら、水中では呼吸できず、お天道様に照らされると、たちまち干からびてしまう。清めの塩をまかれると、体がどろどろに溶けていく。要するに、水や太陽や塩など、穢れを祓うものが大の苦手なのだ。いつもねばねばの粘液をまとって移動するから、通り道がべとべとになるばかりか、致死性の寄生虫が巣くっているから、子供たちが「でんでん虫むし、かたつむり、おまえの頭はどこにある」と歌いながら触り、手を洗わずに物を食べると、寄生虫が胃から侵入して脳を冒してしまう。そんなでんでん虫を非難したところで、人間の言葉が通じないから、平気の平左で、いざとなれば殻にこもって出てこない。


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2019年11月30日

ある軍人の死

 軍人として祖国の勝利を信じていた中尉は、部下の戦死という地獄絵を目の当たりにしただけに、敗戦の知らせを聞くと、内心ほっとしたのだった。
 復員した中尉は政治家に転身した。原子力発電所の建設を進めたのも、核武装する好機だと感じたからだった。首相の地位にまで上り詰めたが、旅客機墜落事故で遭難者を見殺しにしたという疑念を持たれた。「本当のことが知られたら、某国と戦争になってしまう。真相は私が墓場まで持っていく」として、原因の究明を断固拒否した。
 首相を辞任した後、百歳を越える長命を保ったのも、ひとえに敗戦の屈辱を晴らさんがためだった。ついに真相を明かさずに死んだのは、軍人としての気概がなせる業だった。


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