2019年06月17日

尻に敷く

 今は昔、尾張国に木下藤吉郎という草履取りがいた。ある寒い朝、主人の織田信長は草履をはいた途端、「きさま、尻に敷いておったな」と怒鳴った。藤吉郎はすかさず胸元を広げ、「殿のおみ足がこごえぬように、温めていたのでございます」と申し上げた。これをきっかけに信望を得た藤吉郎は、天下取りへの足がかりを得ることになった。
 それから五百数十年後、アメリカの植民地となった日本の首相が、宗主国の親書を携えて中東に旅立った。ところが、相手国から受け取りを拒まれたため、尻に敷いて隠していた。それが写真に撮られて、インターネットで大騒ぎになったが、日本の新聞は「アメリカを尻に敷く偉大な指導者」として首相をほめたたえた。


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2019年05月24日

ぴんぴんころり

 バブル崩壊の前夜だった。男はブランド物のスーツで決め、カクテルを飲みながら、ディスコで女と踊っていた。男の口癖は、日本スゲえだった。財布の札束を見せびらかし、世界第二の経済大国に誇りを感じていた。
 酔いが覚めると、服が湿っていた。卒塔婆が風で揺れている。鴉が無気味な声で鳴いた。握っていたのは人骨だった。墓場で酔い潰れていたのだ。ここから逃げ出さなければ。こんな国じゃ生きていけない。そうだ、外国に行こう。俺はまだ若いんだし。
 ところが、それも夢の続きだった。八十過ぎの痩せこけた老人が、アパートの一室で、瀕死の状態で発見された。「ぴんぴんころり、ぴんころり、年金もらえず、ころり逝く」と口ずさんでいた。


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2019年05月22日

二酸化炭素排出ゼロ

「私は歴史に名前を残したいのよ。2050年までに東京の二酸化炭素排出量をゼロにする目標立てたから、達成する方法教えてちょうだい」
「そのためには、まず、すべての工場や企業を移転させる必要があります。次に、住民を転出させなければなりません。1300万人が排出する二酸化炭素の量は膨大なものですから」
「人間がいなくなれば、さぞかし空気がきれいになるでしょうね」
「さらに、鳥や魚も二酸化炭素を排出するので、死滅させなければなりません。樹木だって、光合成しない時は排出してますから」
「どんな光景か見てみたいわ。でも、私がいたら二酸化炭素排出してしまうわね」
「大丈夫です。その頃は私たちもお墓の中ですから」


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