2016年12月25日

あそこに猫が

 そいつはいきなり現れた。ぼくはたまげてのけぞってしまった。恐る恐る近づいたのだが、向こうはこちらを無視しやがった。そこで、後ろからのぞこうとしたが、忍法を使って消えてしまった。どうやらやつは、厚みというものがないらしい。
 ドアが開いて、お店の中からお姉さんがお皿を持って現れた。そいつがまたしゃしゃり出てきた。甘える声を出すと、肉の塊をまんまと物にした。ぼくももらおうと思ったが、つれなくドアを閉められてしまった。
 かわいいメス猫が現れ、テーブルの上に座っている。ぼくは食い意地張ってた自分が恥ずかしくなった。娘の鼻にキスしたけど、つんと澄ましたままだ。やっぱり女って難しいなと思ったら、真っ暗になった。

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2016年11月29日

凍らない魂

 夜空に出現したUFOは、地球人のサンプルを採集していた。クラブで踊る若者たちは、物質を透過する光線を当てられ、躍動する動きを止められたまま、瞬時にUFOに移動させられた。ガラスケースに凍結保存し、生物研究の資料とするためだった。
「まるで生きているようだろう?」
「そりゃそうさ。解凍すれば生き返るんだから」
 その日から宇宙人の研究者は、人間たちのお喋りに悩まされるようになった。どうやら魂までは凍結できなかったと見え、サンプルの人間たちは動きを止めたまま、日増しに生気を失っていった。鮮度が保たれていないことを恐れ、あわてて解凍したところ、若者たちはマネキンのように、ガラスケースの底に倒れてしまった。

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2016年07月28日

ロボットがあふれる

「世界中がロボットに占領されています」
 テレビを見たロボットは、アナウンサーの発言に耳を疑った。いくらコンピューター技術が発達しても、人間の頭脳を超すような機能を持つロボットの出現は疑問視されていたからだ。ニュースを見たロボット自身も、それはよく知っていた。
 信じられないまま町に出ると、駅前はスマートフォンを片手に、夢遊病のように歩き回る若者であふれていた。彼らの目は小さな画面に釘付けで、中に現れた怪物を捕まえることに夢中になり、車と衝突したり、下水に転落したりしていた。人間としての判断力はすっかり失われていた。
「なるほど、これならゲームをしないロボットが、人間どもに君臨する社会も夢ではないな」


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