2019年01月23日

蟻の王様

 うろうろするばかりの蟻がいた。蟻にはやがて羽が生え、巣の外に飛び立った。蟻の王になろうとした羽蟻は、メスの羽蟻と巡り会った。怠け者同士相性が合った。本来は二匹で新しい巣を作るのだが、手っ取り早く他の巣を乗っ取ることにした。そこで、働き蟻をだまして巣の主を追い出すと、二匹そろって御殿に居座った。さて、子供を作って自分たちの王国を作ろうとしたのだが、一向に子供はできないのだった。
「虫の死体ばかり持ってきやがって、もっとおいしい物を持ってこい」
 腹が空いたオスの羽蟻は、思わず御殿の壁を突き破った木の根を食べてしまった。それを見た働き蟻は、二匹の正体を見破った。
「こいつらは森を食い荒らす白蟻だぞ!」


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:42| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月02日

元号の選定

「閣下にお喜びいただける元号にしたい」
「では、閣下のお名前から『安』の一字をいただいたら」
「それには過去の歴史を紐解く必要がある。京の都の三分の一と内裏を焼いた安元の大火、元軍十四万が九州を襲撃した弘安の役、海底噴火で津波が起きた桜島の安永大噴火、南海トラフ巨大地震や江戸直下型地震などが連続した安政など、不吉な『安』の字は入れられない」
「では、明治維新百五十年を記念して『明』の字を入れることにしよう」
「明応の大地震が起きて、大津波で浜名湖が海とつながった。江戸の大半を焼き尽くした明暦の大火、八重山を壊滅させた明和の大津波、天明には浅間山の大噴火に大飢饉も」
「では、『安』も『明』も却下だな」


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:20| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月30日

外遊好きのATM

 今は昔、核戦争で人類が原始時代に戻る前のこと。大陸の東にあった島国のATMが、人工知能の誤作動により、勝手に入金と出金の処理を始めてしまった。そればかりか、ワープ(瞬間移動)する術まで習得する始末。
 当時は高額紙幣も廃止されており、デジタル通貨中心になっていた。ATMは国王気取りで外遊して首脳と会談すると、湯水のごとく大金をばらまき始める。褒められると条件反射で、相手国の口座に振り込んでしまうのである。
 暴走したプログラムのせいで、島国の財政はついに破綻寸前に。そこで、同盟国の協力のもと、おだてられたATMが演説を始めたところで、ワープする隙も与えずに、全電源を喪失させたとなむ語り伝へたるとや。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 02:35| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする