2019年08月05日

お七と吉三郎

 だから、俺は女が苦手なんだよ。お七は別嬪だし、一途なところあるだろ。寺の中で逢い引きしようとするし、親のうちに連れ込もうとまでするんだから、ついつい情にほだされちまったってわけさ。いくら火消の俺の姿が見たいからって、付け火なんかするかい? 付け火は天下の大罪だ。お役人が不憫に思って、年を偽るように言ってくれたのに、本当の年を白状しちまいやがった。あいつの恋とやらにいかれちまって、家を焼かれた奴まで、火あぶりになったお七に涙を流したっていうじゃないか。おかげで俺のことまで世間に知れ渡っちまって、兄貴に不義理をしたのばれちゃったよ。ふてえ野郎だって兄貴には縁を切られるし、寺に入れられて坊さんには……


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:47| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月03日

モンゴルの少年

 大草原に少年の家族は住んでいた。隣のゲルまで数キロ離れていたから、少年の遊び相手は犬と家畜の羊だった。
 ある時、隣人が馬に乗ってやってきた。少年は犬を動けなくするため、石につないだ。犬は石を引きずったまま走り回った。おみやげは捕らえたばかりの小鳥だった。お客が帰ると、少年はお父さんと一緒に小鳥を逃がした。
 次の日、少年は羊に石をつないでみた。羊ものろのろと石を引きずって歩いた。蛙にも小石をつないだのだが、すっかり忘れて眠ってしまった。
 翌朝、少年はゲルの中で石につながれていた。おじいさんは、干からびた蛙の死体を見せて言った。
「お前がどんなことをしたか分かったか」
 少年は命の大切さに気づいて涙を流した。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:49| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月02日

芸能事務所

「自己紹介してください」
「さる名家のお坊ちゃまです」
「お坊ちゃまね(笑)。それで、何ができるの?」
「何でも。森羅万象を担当しているので」
「へえ、大風呂敷と来たか。で、長所と短所は?」
「長所は嘘をつかないこと。短所という言葉は、私の辞書にはありません」
「ナポレオンか。で、あなたを一言で言うと」
「国家です」
(失笑)
「芝居やってるの? 学芸会とかで」
「バカにしないでください。私は演芸場でプロの芸人と、ソーリ大臣を演じたことがあるんですから」
「芸風は?」
「札束で人の顔を叩くことです」
「それで笑いが取れるの?」
「拍手喝采されました」
「笑わせることと笑われることの区別がつかなくちゃ、芸人は務まらないよ」


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 06:11| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする