2020年07月10日

マスク教

 二〇二〇年の日本では、口と鼻をすっぽり布でふさぐマスク教という新興宗教が流行した。マスクが無病息災の呪符であるかのように、薬局に参拝する老若男女が長蛇の列を作った。この宗教のタチが悪い点は、他人にも信仰を押しつけるところにあった。乗り物に乗るのでも、職場で働くのでも、店に入るのでもマスク着用を強要する有様だった。あまりの弊害に、時の政府もマスク着用の義務なしとのお触れを出したが、マスクへの熱狂はとどまることを知らず、マスク姿で授業をする教師は低酸素症になり、炎天下でマスクをつけて体操させられた子供は熱中症になり、マスクをつけられたまま寝た老人は脳血栓を起こすほどの狂信ぶりであった。


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2020年05月24日

ズボンをはいた小便小僧

 世界的に蔓延した伝染病で、人々は自宅待機を余儀なくされた。海外のユーチューバーが、ズボンをはいたまま小便を漏らすさまを撮影して投稿したところ、閲覧の上位を占めるようになった。その人気を聞きつけて、若者たちはこぞって小便漏らしに挑戦を始めた。
 閉じ込められて鬱積した思いが、幼児の頃に退行したいという願望につながったのだろうか。投稿した若者がたまたまイケメンだったため、かっこいい男がおしっこを漏らすところが、世の女性の心をとらえたのだろうと、社会学者は分析している。
 息子の撮影現場に出くわした父親が、床にこぼれた白い液体を見てぼやいた。
「俺なんか年中、小便でズボン濡らしてるけど、それのどこがいいんだ」


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2020年05月19日

独裁者と御用学者

 首相としての地位に満足せず、国王として即位することを考える独裁者がいた。「国家、それは私だ」と公言し、「森羅万象」を担当すると称して、一切の法律を無視する閣議決定で、専横な政策を押し進めていた。
 ところが、一部の文化人が新聞で批判を展開したために、世論にも変化が生じ、国家を私物化しているという声が上がった。そこで、首相はお友達の御用学者を呼び出して、対策を練ることにした。
「閣下、国民なんか、自分で考える能力がない者ばかりで、新聞に書いてあることを鵜呑みにしています。新聞を検閲した上で、閣下の望むままの法律を施行すればいいのです。いったん法律になれば、やつらが逆らうことはなくなりますから」


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