2019年12月21日

体外離脱

 自分そっくりの青年が歩いていた。知らないうちに、魂だけが抜け出してしまったんだろう。そこで、青年の体に戻ろうとしたのだが、皮膚で跳ね返されて入れない。どうやら先客がいるらしい。
 僕は抗議したのだが、相手の声を聞いて仰天した。僕の体の中に入っていたのは、何と親父だったのだ。通りのガラス窓に自分を映してみると、そこには親父の姿があった! 魂が入れ替わってしまったのだろう。元に戻ってくれと説得したのだが、親父は若い肉体の方がいいと言い張った。正気に戻そうと親父を揺さぶったところ、逆に腕をつかまれてしまった。
「親父、いい加減にしろよ」
 よく見ると、そっくりだったのは僕の息子で、自分は初老の親父だったのだ。


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2019年12月20日

替え玉

 現代の政治家は多くが操り人形です。本人が死亡した場合に備え、替え玉が用意されています。昔なら双子の兄弟やそっくりさんが務めましたが、現代では整形手術をした他人や、本人のクローンが引き継ぎます。後者は遺伝的には同じなので、大抵騙されてしまいます。替え玉が用意できない場合には、息子に鬘をかぶせて父親の服装をさせ、口ぱくでスピーカーから父親の声を流します。予定されている大きな行事などで、本人のスピーチを事前に撮影しておいた場合には、アップで顔を映すときだけ、背景と合成した映像を流します。そこまでしても死んだことが洩れるのは、今まで頻繁にテレビに出ていたのがまれになるなど、不自然な点があるからです。


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2019年12月17日

でんでん虫

 でんでん虫は虫にあらず。貝でありながら、水中では呼吸できず、お天道様に照らされると、たちまち干からびてしまう。清めの塩をまかれると、体がどろどろに溶けていく。要するに、水や太陽や塩など、穢れを祓うものが大の苦手なのだ。いつもねばねばの粘液をまとって移動するから、通り道がべとべとになるばかりか、致死性の寄生虫が巣くっているから、子供たちが「でんでん虫むし、かたつむり、おまえの頭はどこにある」と歌いながら触り、手を洗わずに物を食べると、寄生虫が胃から侵入して脳を冒してしまう。そんなでんでん虫を非難したところで、人間の言葉が通じないから、平気の平左で、いざとなれば殻にこもって出てこない。


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