2019年03月20日

お迎え

 あなたを迎えにくるつもりなんかなかったのよ。でも、おろおろしてるところ見たら、放っておけないじゃない? 私がいなくなったんだから、若い子と遊んでもっとゆっくりしてくれば良かったのに。ほんと、気が早いんだから。私は心に決めてたのよ、来世ではあなたとは絶対に会わないようにしなくちゃって。あなただってそうでしょ。家に居着くことなんか、ほとんどなかったんだから。いやだったのよ。もし会ったりしたら、またあなたを好きになって、大変な人生になってしまうと思ったから。せっかくあなたと別れて、しばらくのんびりしようと思ってたのに、もう来てしまったの? まさかあの世までお世話しなきゃならないなんて思ってなかったわ。


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2019年02月21日

死後の会話

 二十一世紀も半ばになると、死期が迫った老人は、自身の頭脳を電子データとして保存できるようになった。これで夫に先立たれた妻も、モニターを通して夫と会話が楽しめるというわけだ。
 ある日、老夫婦はデータを保管するため、量子コンピューターを購入することにした。
「わしは最先端の機種を買うからな」
「あら、あなたには安いので十分よ。どうせ一度に一つしか作業ができないんだから」
「誰がこんな口の悪い婆さんと、死んでからもお喋りなんかするかね」
「でも、あなた、そんな憎まれ口叩かない方がいいわよ。コンピューターを初期化することだってできるんだし、私がスイッチを入れなければ、あなたはお墓の中から出てこられないんだから」


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2019年02月15日

猫産んじゃった

 年の離れた妻も、ようやく子宝を授かったらしい。日に日にお腹が大きくなり、ついに臨月が訪れた。早めに入院させようとしたが、妻は家事をしていた方がお産が軽いと言ってきかない。
 その日の夕方、俺が仕事から戻ってくると、妻の傍らに一匹の子猫が眠っていた。不審に思って、寝床の妻に問いかけてみた。
「私たちの赤ちゃんよ」と妻は答えて、慈愛に満ちた目で眺めている。もしや妻は、浮気していたのではないか。初老の夫を袖にして、近所の♂猫とつるんでたというわけか。待てよ、まさか俺が猫のはずはないよな。
「実は私、流産してしまったの。泣いていたら、産婦人科医院の息子さんが、生まれたばかりの子猫を連れてきてくださったの」


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