2020年03月17日

神風邪

 アジア大陸の東の端に、独裁をめざす首相が支配する島国があった。外交と称する豪遊と連夜の酒宴に興じるのが政治だった。マスコミが国家の私物化だとして、首相を糾弾しはじめたとき、未知のウイルスが流行して、国民の政治への関心は薄れた。与党はこのウイルスを「神風邪」と呼んだ。それを聞いた人々は、「神とは疫病神のことだろ」と陰口をきいた。
 首相は未知のウイルスにかこつけて、緊急事態宣言を発令し、移動の自由を制限して政府批判を一切禁じてしまった。国民の多くは嘆き悲しんだが、一夜明けると、首相や閣僚の多くが逮捕されていた。緊急事態宣言で社会の活動が停止した間に、宗主国の軍隊が腐敗した政治家を一掃したのだった。


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2020年03月15日

映像の乱れ

 テレビに将軍様が映し出されたとき、電波の状態でご尊顔が崩れて台無しになった。「ただいま電波の状態が悪いため映像が乱れております」というテロップは、鮮明な字で表示されている。それを見た臣民は首を傾げた。
「偉大なる指導者のお顔が、何としたことだ」と、泣き出す者がいる一方で、「乱れているのは、被写体の方じゃないんですか」とか、「今日のテレビは本当に良く映っている。正体がよく分かった。取り憑いてる悪霊が映ってしまったんだ」などと、冷笑する者もいた。「電波が乱れているのは大地震の前兆だ」と憂える者もいた。
 放送をご覧になった将軍様は、イメージを傷つけた罪は重いとして、局の責任者を強制収容所送りにした。


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2020年03月09日

詩人と政治家

「景気が良くなれば、必ず不景気から抜け出せます。私はそう信じている」という大臣の発言で、気軽に詩を作るという風潮が生まれた。
「海外に日本人の富を流せば、日本人は貧しくなります。私はそう信じている」
「人口が六千万人になれば、日本の人口は半減します。私はそう信じている」
「除染土を農地に使えば、除染土の袋は福島から消えます。私はそう信じている」
「コロナウイルスの検査をしなければ、日本の感染者数は少なくなります。私はそう信じている」
 コンクールに寄せられた詩はどれも似たり寄ったりで、換骨奪胎は日本の伝統という意見が出たものの、元の詩に価値がないのでいずれも愚作ということで、受賞者なしと決定した。


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