2019年11月17日

嘘つきじいさん

 むかしむかし、長門の国に子供のような老人がいた。長者の家に生まれたことから、わがままいっぱいに育てられた。昔話を史実だと信じていたから、枯れ枝に桜を咲かせられると思い込んでいた。葉の落ちた枝に藩札をまくと、桜の花が咲く代わりに、サクラが集まってきた。そこで、集まってきた人々に、枯れ枝に桜の花が咲いたと言い触らすように頼んだ。
 その噂を聞きつけたお殿様が老人を呼びつけ、目の前の枯れ枝に桜を咲かせるように命じた。お札をまくわけにはいかないから、千切った紙切れをまいて、桜吹雪でございますと答えた。
「この嘘つきめ」
 お殿様は激怒してしまい、偽者の花咲かじいさんは、とうとう牢につながれてしまったとさ。


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2019年11月05日

地震予知

 常夏の島の王国に、地震予知を生業とする男がいた。島ごとに方位磁石を設置し、針の指す方向のずれから、どこで地震が発生するかを予測していた。あるとき、磁石の針がくるくる回転を始めた。これは未曾有の災厄が迫りつつある兆候だった。男はインターネットを介して、船で沖合に避難するように呼びかけた。
 しかし、警報を発した途端、サイトは閉鎖され、男も公安によって連行されてしまった。
「いかなる罪状で拘束されたのですか」
「天変地異を予言するなど、人心を紊乱する恐れがあるからだ。民に動揺が広がれば、それに乗じて政変を起こす輩が現れ、ひいては他国につけいる隙を与えることになる」
 そのとき、遠くから地鳴りが聞こえてきた……


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2019年09月18日

外面如菩薩内面如夜叉

 今は昔、天竺に御母と慕はれし耶蘇教の比丘尼ありけり。長者より慈善の金を集め、身寄りなき貧しき男女を養ひけり。病に倒れたる者にも療を施し、天女の化身と讃へられけり。しかるに、その実、幼き子らを人買ひに売り、巨万の富を得たり。苦しみに耐へてこそ、神の恩寵に与ることも叶ふべけれと説きて、慈善の金を医術に使ふも惜しみたり。売られたる子の多くは、淫欲に耽る獣の如き者共の餌食となり、無慙なる最期を遂ぐる者も少なからず。これ天魔波旬の行ひにあらずや。死して聖女に祭り上げられしも、因果応報の理により無間地獄に堕ち、百千万阿僧祇劫の間業火に焼かるる定めに、魔王へ助けを求めたるはいと浅ましとなむ語り伝へたるとや。


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