2018年09月01日

John Coltraneの《Live In Stockholm,1961》

 スタジオとライブの録音では、同じアーティストの演奏でもかなり違う。スタジオでは録音状態がよく、いくつか録音したうちの、最も良いテイクがアルバムに収録される。
 一方、ライブの場合、周囲の音が入ってしまうし、必ずしも録音に適した会場とは限らない。ただ、それが場面の熱気も伝えることになるのだが。
 アーティストによっては、会場の反応が演奏に影響する。即興演奏が多いジャズの場合には、高揚した状態では神が降臨したような、素晴らしい演奏になることがある。さらに、力の上で競合するアーティストが参加すると、奇蹟的な音空間が出現する。
 コルトレーンには《My Favourite Things》というアルバムがあり、同じメロディーを変奏しながら盛り上げていく点で、クラシックならラヴェル作曲のボレロを連想させる。一般に知られたこのアルバムも悪くないのだが、コルトレーンの執拗さが、人によっては単調さに感じられるかもしれない。
 同じ題名の曲を、コルトレーンはライブでも演奏しており、特に1961年にストックホルムで、エリック・ドルフィーと共演しているものが、今回お勧めしたいアルバムである。録音状態は必ずしも良くないが、コルトレーンの演奏は乗りに乗っている。単調さは感じられず、呪術的な力で会場を圧倒しながら、絶頂に向かってひた走っていく。
 絶頂に達した瞬間、コルトレーンに代わってドルフィーのフルートが、同じメロディーを天上の音楽のように、変幻自在に奏でていく。こんな素晴らしいドルフィーの演奏は、僕は他に知らない。ほとんど神懸かっている。もう息を呑むばかりで、呼吸をするのを忘れてしまいそうである。
 僕はかなり前、このライブ演奏をmp3でダウンロードした。演奏の素晴らしさに感動したが、音の状態が余りよくないと思った。最近、ジャズ喫茶でそれを聴いて打ち震えた。早速、CDがほしくなった。以前調べたとき、中古で15000円で売っていた。ところが、その夜に限って、1500円で売っているのを見つけた。届いて聴いてみると、やはりCDの音は違った。魂がこもっている。mp3なんか所詮、メロディーが聞こえるだけの張り子に過ぎない。
 このアルバムには、ライブ盤のBlue Train、Naima、Impressionsも収録されている。いずれも、スタジオ録音よりも、自由に想像力を巡らした、最高の演奏だった。mp3で聞いた時にはそれに気づかなかった。こんな素晴らしいアルバムがなぜ廃盤となっているのか。また、リマスターしてハイレゾで聴けたら、さらに感動が高まるだろうに。


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2018年08月08日

MQA-CDを普及させるための条件

 MQA-CDはCDと余り変わらない容量で、352.8kHz/24bitの高音質を実現する。また、SACDとは異なり、リッピングが可能で、対応する携帯プレーヤーでも聴くことができる。音質の高さに関する評判も良く、素晴らしい技術だと賞賛したい。
 ただし、普及させるためにはいくつか問題点がある。MQA-CDを再生させるディスクプレーヤーは非常に高価で、一般のユーザーは手が届かない。また、ソフトウェアでのデコードでは、96kHZ/24bitまでしか展開されず、MQA対応のDACをパソコンに接続しなければフル展開されない。これでは、オーディオマニアでなければ手を出さない。
 一般のユーザーがMQA-CDを聴く安価な方法は、MQA対応の携帯プレーヤーを用いることである。ただし、リッピングに関する情報が乏しい。ネットを検索しなければ方法が分からない現状では、一般のユーザーがMQA-CDのサンプラーを入手しても、リッピングの方法が分からずじまいになる。
 まず、リッピングできるソフトウェアが限られる。携帯プレーヤーで普及しているのは、ソニーのウォークマンである。MQA対応をうたっているが、ソニーのMusic Centerではリッピングができない。フリーのExact Audio Copy(http://www.exactaudiocopy.de/en/index.php/resources/download/)などを用いて、可逆圧縮でリッピングするしかないが、ファイル検索用のタグが自動で入力されない場合は、Mp3tag(https://www.mp3tag.de/en/)の併用も必要になる。さらに、拡張子をflacから、mqa.flacに変更することで、ようやくパイオニアなどの携帯プレーヤーでは、MQAの高音質を楽しむことができる。
 しかし、ソニーのウォークマンでは、これだけのことをしても、リッピングしたファイルはMQAとして認識されない。リッピングしたファイルに、foobar2000(https://www.foobar2000.org/)などを用いて、ORIGINALSAMPLERATEが352800、ENCODERがMQAEncoderである情報を、タグ編集で追加しなければならないのである。
 こんなに面倒くさいのだから、MQA-CDを携帯プレーヤーで聴こうとしたユーザーのうち、352.8kHz/24bitの高音質で堪能した人は1割に満たないのではないか。現状のままでは、MQA-CDは素晴らしい音質を誇りながら、かつてのHDCDのように廃れてしまう恐れがある。
 この壁を打破する方法としては、MQA-CDの発売元であるユニバーサルミュージックが、ホームページでリッピングの方法、特にソニーのウォークマンで聴くための詳細な方法を、ホームページで紹介することである。ただ、いまだにそれがなされていないのは、余りに煩瑣な作業に消費者が引いてしまうのを恐れているのではないか。
 それならば、一発でMQA-CDをリッピングして、拡張子にmqaの文字を追加し、ORIGINALSAMPLERATEやENCODERの情報も自動で打ち込むソフトウェアを公開する必要がある。最良の方法は、ソニーのMusic Centerでそれができるようになることである。それが難しいなら、せめて拡張子にmqaの文字を追加するだけで、リッピングしたファイルを、ウォークマンがMQAとして認識するように、アップデートがなされることである。


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2018年08月07日

アート・ブレーキーの《チュニジアの夜》

 正確にはアート・ブレーキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズによる演奏で、ドラムはアートブレーキー、テナー・サックスはウェィン・ショーター、トランペットはリー・モーガンが担当している。アート・ブレーキーの最高のドラム演奏が聴ける。
 個人的な印象としては、ドラム、ベース、ピアノ、サックスまたはトランペットというふうに、ジャズの演奏の多くでは、どの楽器が前面に出るかという意味で、ヒエラルキーが存在するように思える。その意味では、ドラムは裏方に徹することが多い。
 ところが、アート・ブレーキーとジャズ・メッセンジャーズの「チュニジアの夜」では、ヒエラルキーが引っ繰り返り、アート・ブレーキーのドラムが前面に出る。和太鼓のようにほとんどドラムのリズムだけで、呪術的な迫力のある演奏をベースとピアノが下支えしている。そこに、ウェィン・ショーターのテナー・サックスとリー・モーガンのトランペットが警笛のように響き渡る。
 1曲目の「チュニジアの夜」が圧巻なのだが、2曲目の「シンシアリー・ダイアナ」では、サックスとトランペットによるスリリングな世界が展開する。
 3曲目の「ソー・タイアード」はくたくたといった意味だが、斜に構えた感じで、夜の時間になると、たちまち元気になる若者の姿を表しているのだろうか。
 4曲目の「ヤマ」は憂愁が漂うメロディー。このアルバムの中ではもっとも静かな曲で、ピアノの演奏に続くリー・モーガンの高らかに吹くトランペットの響きが印象的である。
 5曲目は「小僧のワルツ」。アート・ブレーキーのドラム、次いで、ベース、トランペット、テナー・サックスと続く。親日家だったアート・ブレーキーは、題名に「小僧」という日本語の入った曲を選んだ。親分が子分である小僧に、見せ場を与えてやったという感じ。「チュニジアの夜」に次いで、意識の高揚を感じさせる演奏である。


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