2020年07月05日

崇徳上皇の霊廟(3)

 崇徳上皇は1164年(長寛2)8月26日(新暦では9月21日)に崩御された。御遺言により、稚児が嶽で荼毘に付された。『雨月物語』の「白峰」で描かれた西行が、崇徳上皇の霊廟の前で読経したのは、1166年(仁安元)であるから、崩御から二年後のことである。
 白峯寺の勅額門を過ぎて、右の石段を上れば本堂、大師堂がある。頓証寺殿の左方、細い山道を下るのが、白峰御陵への道である。直径1メートル近くもある巨木の杉が数本、行く手を遮るように立ち並んでいる。しばらく行くと、左方に急な石段が続いており、右方が石の柵に守られた御陵である。
 西行が上皇の菩提を弔うために、夜通し読経したのは、先ほど通った霊廟、頓証寺殿の前とされる。熱意に心動かされたのか、霊廟が震動すると、崇徳上皇の霊が姿を現して和歌を詠まれた。

 松山の浪に流れてこし船の
    やがて空しくなりにけるかな

 西行は涙して、御返歌申し上げた。

 よしや君 昔の玉の床(ゆか)とても
    かからんのちは何にかはせん

 松山の浪に流れ着いた船は、すぐに跡形もなくなってしまったと、上皇は配流の日々の空しさを詠まれた。それに対して西行は、たとえ昔は金殿玉楼におられたとしても、世を去ったのちは、それが何になりましょうか、成仏なさいませと申し上げた。生前の怒りにかられた上皇は声を荒げて、魔王となる決意をした経緯を語られたという。


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2020年07月03日

崇徳上皇の霊廟(2)

 この里ちかき白峰といふ所にこそ、新院の陵ありと聞て、拝みたてまつらばやと、十月はじめつかたかの山に登る。松柏は奧ふかく茂りあひて、青雲の輕靡(たなび)く日すら小雨そぼふるがごとし。

 上田秋成の『雨月物語』の冒頭「白峰」は、五色台と言われる台地の西に位置する。諸国を行脚していた西行は、白峰という所に、崇徳上皇の陵墓があると聞いて、参拝したいと十月初めに登った。松や柏が深く茂り合って、青空に雲のたなびく日すら、小雨がしとしと降るように薄暗かった。

 白峯寺の中を歩いていく。護摩堂で不動尊を拝んだ後、左手に進むと道は三つに分かれる。正面は頓証寺殿である。崇徳上皇がたちどころに悟るように、鎌倉初期、鼓岡の御所を移したと伝えられる。前面の門は江戸初期に再建されたものだが、後小松天皇御宸筆(しんぴつ)の額が掛けられているので、勅額門と呼ばれている。門には源為義・為朝父子の像が安置されている。保元の乱で崇徳上皇に与(くみ)して、為義は死罪、為朝は配流(はいる)先の伊豆大島で自害している。(つづく)


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2020年07月01日

崇徳上皇の霊廟(1)

 坂出からバスに乗って、高屋(たかや)神社に向かった。保元の乱で讃岐に流された崇徳上皇ゆかりの地を訪ねるためである。この神社は崇徳上皇をお祀りしている。境内には「御棺台石」がある。崩御した上皇の棺(ひつぎ)を六角の石に置くと、血がしたたったと言われる。
 傍らには身をかがめたような、奇妙な曲がり方をした巨木が立ち、木洩れ日すらない薄暗さである。中央の棺が置かれた石は苔むしている。セミの声が響き渡り、快い風が吹き渡ってくる。彼方には瀬戸大橋のアーチも見える。
 高屋神社から急坂を上っていくと、遠くに瀬戸の島々が見えてくる。上皇が眺められた風景なのだろうか。彼方には本州がある。京の都はそのはるか先。許されて帰京することがかなわず、せめて写経だけでも届けようとしたが、呪詛の恐れありと讒言(ざんげん)されて、ついに上皇は魔王となる決意をされたという。(つづく)


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