2014年02月24日

ビールは誰のもの?

 日本語の上級クラスで、留学生と一緒に、影山太カ氏の『ケジメのない日本語』を読んでいた。その中で一緒に飲んでいるビールビンが誰のものであるか、ということについて、日米の認識の違いが論じられていた。
 日本人とアメリカ人が、レストランでビールを2本頼んだ。「日本ではビールを相手に注いであげるのが礼儀です」と説明して、日本式に互いにグラスに注いで乾杯した。影山氏はそれに続く状況を、以下のように説明している。

 しばらく飲んでいると、ウェートレスが、空になったビンを片づけるために、やってきた。アメリカ人の前に置いてあったビンがほとんど空いていたので、ウェートレスはその残ったビールを日本人のグラスに注いで、ビンを持ち去ろうとしていた。それを見ていたアメリカ人は驚いて叫んだ。「ちょっと、それはぼくのビールだよ!」

 日本人はビールを共有物と考え、たとえ目の前に置かれたビンでも、自分のものに属するとは考えない。これについてアジア系の学生に訊くと、日本人のように考えているとのことだった。それに対して、ヨーロッパ系の学生は、アメリカ人と同様に考えるとの返答だった。
 もし、互いに注ぎ合っていて、ちょうど1本ずつ飲むべきだと考えていたなら、アメリカ人は自分の飲むべきビールが、日本人の手元にあると考えるはずだと、僕は言った。もしそうだとしたら、なぜ、アメリカ人は不満を言ったのだろう?
 こちらの質問に対して、スウェーデン人は次のように推測した。相手のグラスに注いだのは一杯目だけで、あとは自分の手前にあるビールを飲んでいたに違いない。だからこそ、アメリカ人は自分の手元のビールが、ウエートレスによって、日本人のグラスに注がれたとき、不満を述べたのだと。
 僕はスウェーデン人学生の、状況把握の能力に感服してしまった。このように、教師という者は、往々にして、学生に教えられて成長していくものなのである。

参考文献
影山太カ『ケジメのない日本語』岩波書店


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2013年11月28日

国語辞典いろいろ(2)

 もっぱら文学作品を用例として引用しているのが、『学研国語大辞典』である。小説家を目指している人には、参考になるかもしれない。また、表現上の技法について説明が加えられているものに、『福武国語辞典』がある。
 中学生向けに分かりやすい語釈をしているのが、『例解新国語辞典』である。類義表現の説明も、平易なものになっている。中級の日本語学習者にも使いやすい。
 ここまで、中規模以下の国語辞典を、一部紹介したに過ぎないが、分量の上で群を抜いているのが『日本国語大辞典』(全20巻+別巻)である。方言など他の辞典では未収録な語を調べたり、日本語研究で引用する場合には、これを使用するといい。簡略版には尚学図書編集の『国語大辞典』があったが、現在は『日本国語大辞典』の一部を3分冊にまとめた『日本国語大辞典』精選版が出ている。
 国語辞典の周辺には、的確な表現を探したり、類義語の違いを調べるのに役立つ類語辞典がある。角川書店の『類語国語辞典』や『角川類語新辞典』が、表現の微妙な違いや、多義語の説明で優れている。収録語数は前者が多いが、後者は電子化されており、IME(かな漢字変換システム)atokの連想変換に組み込むことができる。


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2013年11月27日

国語辞典いろいろ(1)

 国語辞典といったら、年配の方は『広辞苑』と答える場合が多いだろう。新語も古語も載っているし、百科事典の代わりにもなるからというのが理由だろうが、分量が多いだけで、語釈は他の語に言い換えているものが多く、用例は出現の古いものを優先しているから、『万葉集』や『源氏物語』、新しいのでも江戸時代の例で、現代のものは少ない。
 同規模の辞典なら、『大辞林』や『大辞泉』の方がお勧めである。百科事典の要素を兼ねる一方、用例は現代の用法を優先しているからで、改訂によって新語も次々に収録されている。一般の日本人が使用するのに適している。
 大学生や上級の日本語学習者に勧めたいのが『明鏡国語辞典』である。文法に則した語釈がなされており、類義語の違いや、連語の多くも収録されているからである。使いやすさは同類の辞典の中で随一である。
 語釈が個性的なのは、『新明解国語辞典』である。「浮気」の項目を見ると、「妻(夫)を愛するだけでは足りなくて、他の異性とも一時的に愛欲関係を持つこと」とある。随分と具体的であるが、最近は夫の浮気相手が、イケメンの青年だったり、男の娘だったりするから、「他の異性、または同性」というふうに改訂されるかもしれない。また、『新明解国語辞典』には、日本語のアクセントが記されており、共通語の発音を習得したい日本人にも有用である。(つづく)


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