2016年12月22日

日本語の表記

 前島密は将軍徳川慶喜に対して『漢字御廃止之議』を提出し、漢字の廃止や口語体の採用などを建白した。近代化を押し進めるには、学習に時間がかかる漢字が障害となると考えたからである。
 同時期に活躍した思想家西周は、具体的に日本語をアルファベットで表記する方法を研究した。ここで注目されたのは、表記を発音によるのではなく、歴史的仮名遣いによった点である。時代の変遷を経て、表記は変わらなくても発音は変化していく。表記を保存することで、古代語との関係は視覚的に維持されるのである。また、アルファベットを用いる英語なども、表記と発音に大きな隔たりがある。西周の場合、それにならったとも言えるだろう。
 結局、西周の場合も、漢字仮名交じりの表記を支持することになる。漢語における同音異義語が、アルファベットでは区別できなくなり、読み手にとって意味が十分に伝わらない場合も出てくるからである。固有名詞を除いて漢字を廃止した韓国語では、そうした問題が起こっている。
 第二次大戦後、日本語における漢字はふたたび、存続の危機に立たされる。民主主義の普及の妨げになると考えられたからである。「小説の神様」と言われた志賀直哉などは、日本語そのものの使用をやめて、フランス語を国語とすべきだと発言している。日本語は廃止されなかったけれども、発音に即した現代仮名遣いが施行され、漢字の字体は簡略化された。使用される漢字も制限され、「当用漢字表」が制定された。漢字は当座の使用にとどめ、いずれ廃止することが念頭にあったからである。「当用漢字」が「常用漢字」となり、漢字は将来にわたって使用されることとなった。
 漢字は学習には時間がかかるが、造語力に優れているし、未習の専門用語であっても、漢字の組み合わせによって意味を推測できる。見た瞬間に、何について書かれた文章か分かるなど、文章を理解する上で大きな役割を担っている。また、和漢混淆文なども古語で書かれているが、表記が変わらない漢字によって理解が助けられるなど、日本語にとってなくてはならないものになっている。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:04| Comment(0) | 日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月18日

初級日本語を教える上で(2)

 具体的な会話例を示す

A「行く」「来る」という表現は簡単なようですが、教える際には注意が必要です。例えば、相手のうちに出かける場合、日本語では「行く」を用いますが、英語では come で表現します。日本語学習者は単語の意味だけを暗記しがちで、日本語の「行く」と英語の go とでは、使用できる範囲が異なることがなかなか理解できません。
 ここで重要なのは、それに気づかせるような会話例を提示することです。AとBの家を黒板に図示して、電話をかけている様子を教師が演じて見せた後、会話を少しずつ替える練習を学生にさせましょう。A「あしたうちに来ますか。」 B「はい、行きます。」 A「何時に来ますか。」 B「二時に行きます」 A「バスで来ますか、電車で来ますか」 B「バスで行きます」

 語感に頼りすぎるのは危険

B「重い」と「重たい」の違いですが、前者は普通の表現で、後者は口語的な表現です。「あたたかい」と「あったかい」などの例も挙げるといいでしょう。書き言葉としては、「重たい」「あったかい」は避けた方がよいと教えます。語感としては「重たい」の方が実感を伴うという意見も分かりますが、一部の学生しか理解できないような説明は避けるべきです。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 00:35| Comment(0) | 日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月17日

初級日本語を教える上で(1)

 学習目的に合わせた指導を

@一部の日本人が「助数詞」の一部を、「(一)個」や「(一)つ」で、代用する現象は確かに見られます。しかし、日本人が「助数詞」を誤用するのはまれですから、規範とされている用法は、きちんと学生に教えていくべきです。日本人なら「四日」と「八日」を間違えたり、「犬がいちぴきいました」などと言ったりすることはありません。「本を二本買いました」と外国人が言ったら、稚拙な日本語力を象徴するものとして、日本人から軽く見られてしまうでしょう。それをどの範囲まで教えていくかは、学習目的に合わせた指導が必要となります。
 本人が進学を目指していたり、日本に居住している場合には、初級の教科書に出てくるものくらいは、きちんと身につけさせましょう。そこで問題となるのは、「いっぷん」「にふん」「さんぷん」といった発音上の不規則さですが、これらは口頭練習をしっかりして、口と耳で覚えさせてしまいましょう。
 また、ビジネスマンなどの場合には、「人」「日」「分」「階」など必須のものをまず教え、発音上不規則さのない「台」「枚」なども、学習者の負担を考えながら加えてみるといいでしょう。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:39| Comment(0) | 日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする