2019年12月25日

「と」「ば」「たら」「なら」の違い

 人間は似ていることを区別するのが苦手である。フランス語を勉強していた頃、フランス語の単語を思い出そうとすると英語の単語が浮かび、英語でしゃべろうとすると、フランス語の単語が邪魔をした。
 同じようなことは、中国人の日本語学習者が、日本語で文章を書いているときにも起きる。中国語の簡体字が混入してしまうのである。また、中国語で話しているのに、日本語の漢語が混じってしまい、国の友人に怪訝な顔をされたという話も聞く。
 松尾芭蕉の俳句に

 物言へば唇寒し秋の風

というのがある。
 人の短所を言ったりすると、後味が悪いものだという格言のように使われるが、「物言へば」の部分は、現代語なら仮定条件を表す「仮定形」で「物を言うなら」だが、芭蕉の俳句は文語だから「已然形」で確定条件となり、「物を言ったので」ぐらいの意味となる。
 文語の場合、仮定条件を表すなら、「未然形」に接続する。「物言へば」ではなく、「物言はば」となるのである。慣用句の「言わば」は、「たとえて言ってみれば」という意味で、現代語なら、仮定形で表されるところなのである。古典の授業で習ったことを忘れると、この辺の違いが分からなくなってしまう。

 名にし負はばいざ言問はむ都鳥
  わが思ふ人はありやなしやと

 東京の浅草に言問橋という橋があるが、この和歌は『伊勢物語』の中で、在原業平とされる主人公が、都鳥という名の鳥に向かって、「名前に都とついているなら、都鳥よ、質問しよう、私の大切に思う人は無事かどうか」と問うたものである。都鳥というのはユリカモメのことで、「これなむ都鳥(これこそ都鳥です)」と聞いたばかりだからこそ、「名にし負はば(名前についているなら)と、詠んだのである。

 現代語の「春になれば桜が咲く」は、文語の已然形に由来する「恒常条件」である。「春になると桜はいつも咲く」のである。一般に、「ば」を従属節に用いる表現では、主節に意志や希望、命令の表現は来ない。
「もし雨が降ってくれば、キャンプは中止しなさい」は非文となる。その場合、「もし雨が降ってきたら」というのが正しい表現となる。にもかかわらず、従属節の用言が「ある」など状態性の動詞や形容詞なら、「質問があれば、手を挙げてください」「安ければ、買いたいです」と言えてしまうのである。
 このように、「と」「ば」「たら」「なら」の区別は煩瑣を極め、日本語話者であっても、文法的な使い分けを説明するのは、容易なことではない。
 そこで、「基本的な用法」と「応用的な用法」に分けて整理してみた。網羅的に学習するのは難しいが、よく用いられる表現を一通り押さえておけば、自分が表現する際の誤用は避けられる。上級の日本語を学習している外国人学生や、日本語を教えている方は、参考にしていただきたい。

 以下のリンクからダウンロードできます。
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posted by 高野敦志 at 01:46| Comment(0) | 日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月13日

日本語教育能力の判定に関する報告(案)に関する意見

 日本語教師の資格や養成に関する課題について

 日本語教育能力検定試験は、当初、文部大臣認定として実施されていた。ところが、途中から文部大臣認定が外れてしまった。どういう経緯で、文部大臣認定が外されたか、明らかにしてもらいたい。文部大臣認定だから、公的な資格だと考えて受験して合格した人間に対して、無資格だと決めつけるのは納得できない。


 日本語教師の量の確保について

 日本語教師の数の確保のためには、低賃金に置かれた教師の待遇が改善される必要がある。公立学校に対するように、日本語教育施設に対する税制面での補助がなければ、経営の苦しい日本語教育施設の教員の給与面での待遇改善は難しい。専任講師の給与で家族が養える給与が出ないとなれば、若い人材は日本語教師を職業として選択しないと考えられる。


 日本語教師の資格制度「公認日本語教師」について

 日本語教師の公的資格は、創設されて然るべきであると考える。無資格で日本語を教えているというマスコミの報道により、日本語教師を希望する若い人材は得られにくくなっているのが現状である。


「公認日本語教師」の有効期限について

 有効期限を設けることは、教師の質の維持の上では有効であるが、公立学校の教師の場合のように、深刻な人材不足を招く恐れがある。20代で資格を取った場合、10年ごとに3〜4回も資格更新をするとなれば、低収入の現状から見て、志望する学生が激減すると思われる。


 教育実習実施機関及び指導時間について

 教育実習の一部を外部の日本語教育機関に委託する場合、対価が大学等から支払われる制度をきちんと作ってほしい。教壇実習が1単位時間(45分)以上というのは少なすぎる。10単位時間程度行わなければ、教え方のコツを習得することもできないと思われる。


経過措置について

 一定の移行期間とあるが、その期間を明らかにしてほしい。日本語教育能力検定に合格していない教師に対しても、無条件で資格を与えるのが妥当かどうかは疑問である。


更新講習の要件について

 更新のたびに、大学や養成講座に10万、20万も支払うとなると、日本語教師を希望する人材はいなくなると思われる。更新にかかる費用は、税金で補助すべきである。また、休職しないで、仕事を続けながら受講できるようにすべきである。


 試験免除の措置について

 日本語教育主専攻の学生も、「公認日本語教師」の試験を免除すべきではない。主専攻できちんと学んでいれば、当然合格できるはずだからである。


 なお、文化庁が出した「日本語教育能力の判定に関する報告(案)」に関する情報は、以下のサイトで閲覧できます。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/ikenboshu/nihongoiken_hanteihoukoku/index.html


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posted by 高野敦志 at 01:14| Comment(0) | 日本語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月08日

日本語の連文的機能

 日本語の文章では、代名詞や指示詞を省略する傾向がある。連文的機能が潜在化しており、文と文のつながりを読み手に推測させるのである。日本語の文章を読みこなすことは、決して容易な作業ではない。
 優れた書き手は、目に見えないつながりの糸を絡ませることで、テキストを織り上げていく。ただし、つながりが複雑な場合には、名詞を繰り返すことで誤読を防ぐ。詩的な文章においては、文と文の論理的な関係を示す接続詞も避けられる。
 同じ書き言葉でも、論理的な文章は誤読を避けるために、指示詞や代名詞を多用するが、これには欧米の言語や翻訳文の影響も考えられる。文章の構成への理解を助けるために、接続詞も多用される。
 話し言葉になると、話す方も聞く方も、文と文のつながりを理解する能力が低下する。発話されたそばから、言葉が消えてしまうためである。そこで、誤解の恐れが少ない場合でも、名詞を明示したり、表現を繰り返すことになる。順序立てて話すことは難しく、接続詞を介在させることなく、脈絡のない話が飛び出したりする。
 さて、外国人の書いた日本語がぎこちなくなりがちなのはなぜか。代名詞や指示詞、接続詞を多用すれば、堅苦しい翻訳調の文章となる。誤用すれば、非文になるわけだが、顕在する誤りがなくても、文と文のつながりがなく、文を羅列したような場合がよくある。それは隣接した文と文以外に、離れた文と文の連文的機能まで、目を配る余裕がないためと考えられる。これは外国人の文章ばかりでなく、日本人が書いた稚拙な文章でも言えることである。


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