2018年11月08日

「は」と「が」の使い分け(第3版)

 日本人が何気なく使っている「は」と「が」は、外国人の日本語学習者には、なかなか習得することが難しい。同様の区別がある韓国語の話者なら、すぐに理解してもらえるが、中国人や欧米人には、煩雑すぎてなかなか理解してもらえない。読んだり聞いたりする分には問題なくても、いざ表現する段になると、上級レベルの学生でも間違えてしまうことが多い。
 古代の日本語では主題の「は」は、用いられていたが、主格の「が」の位置には何も現れなかった。「我が国」の例に見られるように、現代語では所有の「の」に相当する表現として、「が」は用いられていたのである。

 色は匂へど散りぬるを(現象である花は咲いても散ってしまうのに)「いろは歌」

 むかし、男ありけり。(昔、男がいた。)「伊勢物語」

 外国人は初級で「は」と「が」を習うのだが、基本的な用法を習得しないまま、さまざまな用例にぶつかって、混乱してしまうことが多い。とりあえず辞書を見れば、文法的な説明は書いてあるのだが、細かく分類してあるので、途方に暮れてしまいがちである。外国人に微妙な使い分けを教える場合は、要点をとらえて、これだけ知っていれば、九割方は正しく使いこなせるようにするのが、実用的な教え方である。
 留学生に「は」と「が」の使い分けを、分かりやすく説明してほしいと頼まれたので、試みに資料を作ってみた。外国人の中級・上級レベルの学生に教える場合や、日本語学習者で使い分けの区別を確認したい場合は、以下のリンクでpdfの文書を開いてみてほしい。
watoga.pdf

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2016年12月29日

『実用変体がな』について

 古典文学や日本史の専門家は、活字ではない写本を読めなければならない。実際に見ると、墨で書かれた文字を判読するのは容易ではない。字体が崩れているだけではなく、現代人が使わなくなった「変体がな」が多数使われているからである。
 以前、自分のルーツが知りたくて、曽祖父の戸籍を調べていると、読めないひらがなが出てきた。それが「変体がな」だった。「変体がな」は人名にはよく用いられていたし、そばやの看板の「そば」の字は、「楚」の変体がなと、「者」の変体がなに濁点のついた字が用いられている。国語学者の山田孝雄の著作も、活字の「変体がな」が用いられている。谷崎潤一郎の『盲目物語』の和綴じ版にも、「変体がな」が多く出てきた。
 日本語の専門家の端くれなので、かな研究会篇の『実用変体がな』を購入してみた。これは大学や短大の授業で用いられるように編纂された本である。例えば、ひらがなの「あ」は、「安」「阿」「愛」「亞」「惡」の草書体が元になっているのが分かる。しかも、写本の「安」を崩した見本は30以上もある。漢字の原型をとどめているものや、現在のひらがなに近い形まで崩されている字は読みやすいが、難しいのは崩し方が独特で「め」や「ろ」と誤読しそうな字体である。よくもこんなにあると気が遠くなったが、当時は墨で書いていたので、字によってはこれだけバリエーションが出てきてしまう。
 今回紹介する本の利点は、コンパクトにまとめられている点と、実際の用例も収録されている点である。「変体がな」がつながって書かれるとどうなるか、写本の例で確かめることもできる。巻末にはカタカナの「変体がな」の例も収録されている。
 実際に覚えたいなら、見本を見ながら筆で書いた方がいいだろう。どんな漢字の草書体かと覚えておくだけでも、実際に「変体がな」と出くわしたときに戸惑わずに済む。
 中学校ではかな文字は平安時代に成立したと習った。それ以前は万葉がなが用いられていたのも分かっていた。それ以上のことを知ったのは、成人してからだった。「変体がな」は万葉がなが部分的ではあるが、20世紀まで生き残っていた名残なのである。

参考文献
 かな研究会編『実用変体がな』(新典社)

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2016年12月22日

日本語の表記

 前島密は将軍徳川慶喜に対して『漢字御廃止之議』を提出し、漢字の廃止や口語体の採用などを建白した。近代化を押し進めるには、学習に時間がかかる漢字が障害となると考えたからである。
 同時期に活躍した思想家西周は、具体的に日本語をアルファベットで表記する方法を研究した。ここで注目されたのは、表記を発音によるのではなく、歴史的仮名遣いによった点である。時代の変遷を経て、表記は変わらなくても発音は変化していく。表記を保存することで、古代語との関係は視覚的に維持されるのである。また、アルファベットを用いる英語なども、表記と発音に大きな隔たりがある。西周の場合、それにならったとも言えるだろう。
 結局、西周の場合も、漢字仮名交じりの表記を支持することになる。漢語における同音異義語が、アルファベットでは区別できなくなり、読み手にとって意味が十分に伝わらない場合も出てくるからである。固有名詞を除いて漢字を廃止した韓国語では、そうした問題が起こっている。
 第二次大戦後、日本語における漢字はふたたび、存続の危機に立たされる。民主主義の普及の妨げになると考えられたからである。「小説の神様」と言われた志賀直哉などは、日本語そのものの使用をやめて、フランス語を国語とすべきだと発言している。日本語は廃止されなかったけれども、発音に即した現代仮名遣いが施行され、漢字の字体は簡略化された。使用される漢字も制限され、「当用漢字表」が制定された。漢字は当座の使用にとどめ、いずれ廃止することが念頭にあったからである。「当用漢字」が「常用漢字」となり、漢字は将来にわたって使用されることとなった。
 漢字は学習には時間がかかるが、造語力に優れているし、未習の専門用語であっても、漢字の組み合わせによって意味を推測できる。見た瞬間に、何について書かれた文章か分かるなど、文章を理解する上で大きな役割を担っている。また、和漢混淆文なども古語で書かれているが、表記が変わらない漢字によって理解が助けられるなど、日本語にとってなくてはならないものになっている。

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