2018年01月09日

「と」「ば」「たら」「なら」の違い

 人間は似ていることを区別するのが苦手である。フランス語を勉強していた頃、フランス語の単語を思い出そうとすると英語の単語が浮かび、英語でしゃべろうとすると、フランス語の単語が邪魔をした。
 同じようなことは、中国人の日本語学習者が、日本語で文章を書いているときにも起きる。中国語の簡体字が混入してしまうのである。また、中国語で話しているのに、日本語の漢語が混じってしまい、国の友人に怪訝な顔をされたという話も聞く。
 松尾芭蕉の俳句に

 物言へば唇寒し秋の風

というのがある。
 人の短所を言ったりすると、後味が悪いものだという格言のように使われるが、「物言へば」の部分は、現代語なら仮定条件を表す「仮定形」で「物を言うなら」だが、芭蕉の俳句は文語だから「已然形」で確定条件となり、「物を言ったので」ぐらいの意味となる。
 文語の場合、仮定条件を表すなら、「未然形」に接続する。「物言へば」ではなく、「物言はば」となるのである。慣用句の「言わば」は、「たとえて言ってみれば」という意味で、現代語なら、仮定形で表されるところなのである。古典の授業で習ったことを忘れると、この辺の違いが分からなくなってしまう。

 名にし負はばいざ言問はむ都鳥
  わが思ふ人はありやなしやと

 東京の浅草に言問橋という橋があるが、この和歌は『伊勢物語』の中で、在原業平とされる主人公が、都鳥という名の鳥に向かって、「名前に都とついているなら、都鳥よ、質問しよう、私の大切に思う人は無事かどうか」と問うたものである。都鳥というのはユリカモメのことで、「これなむ都鳥(これこそ都鳥です)」と聞いたばかりだからこそ、「名にし負はば(名前についているなら)と、詠んだのである。

 現代語の「春になれば桜が咲く」は、文語の已然形に由来する「恒常条件」である。「春になると桜はいつも咲く」のである。一般に、「ば」を従属節に用いる表現では、主節に意志や希望、命令の表現は来ない。
「もし雨が降ってくれば、キャンプは中止しなさい」は非文となる。その場合、「もし雨が降ってきたら」というのが正しい表現となる。にもかかわらず、従属節の用言が「ある」など状態性の動詞や形容詞なら、「質問があれば、手を挙げてください」「安ければ、買いたいです」と言えてしまうのである。
 このように、「と」「ば」「たら」「なら」の区別は煩瑣を極め、日本語話者であっても、文法的な使い分けを説明するのは、容易なことではない。
 そこで、「基本的な用法」と「応用的な用法」に分けて整理してみた。網羅的に学習するのは難しいが、よく用いられる表現を一通り押さえておけば、自分が表現する際の誤用は避けられる。上級の日本語を学習している外国人学生や、日本語を教えている方は、参考にしていただきたい。

 以下のリンクからダウンロードできます。
tobataranara.pdf

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2017年12月18日

連体修飾節の種類

 日本語における連体修飾節では、名詞の前に修飾する語句が来る。実際の例を挙げて説明しよう。

例 母が作った料理はおいしい。

 修飾される名詞(料理)は、文法用語では「底の名詞」と呼ばれる。

 それに対して、英語では名詞の後に修飾する語句が来る。

例 Dishes(which)my mother made are delicious.

 英語など欧米の諸言語の多くは、修飾する語句を、どんどん後ろにつなげられるから、修飾する部分が長すぎた場合、それを日本語に訳すのには工夫が要る。長大な語句が前置されて「底の名詞」を修飾する場合、修飾・被修飾の関係が複雑になり、文の構成が一読しただけでは分かりにくくなるからである。
 ここで言う「底の名詞」とは英文法における「先行詞」に相当する。また、英語のwhichのような「関係代名詞」に相当する語は、日本語では必要とされない。

 普通はその程度しか、連体修飾節については知らないかもしれない。しかし、日本語の連体修飾節は「内の関係」と「外の関係」に大別され、用法にも細かなルールがあるので、日本語教師として日本語を外国人に教える場合や、上級の日本語学習者も大枠を知っておく必要がある。
 また、日本語を英語に訳す場合も、日本語の連体修飾節について知っておくことは、思わぬ誤訳を避ける上で役に立つだろう。

 以下に用法をまとめたので、ダウンロードして参考にして下さい。
rentaishushokusetsu.pdf

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2017年11月28日

逆接の表現(pdf)

 外国人が日本語を学習するとき、戸惑うことの一つは類似した表現である。英語圏の学生が和英辞典を引いて、英語で違いを理解しようとしても限界がある。やはり、典型的な例文を覚え、違いがどこにあるのか教師に質問するしかない。
 以前、「は」と「が」の違いについて、「と」「ば」「たら」「なら」の区別について書いた。今回は逆接の表現を取り上げることにする。日本人のように完璧に違いを使いこなすのは難しいので、理解できる用法は最大限に増やして、学習者自身が日本語で表現する場合は、誤用が避けられるように、使い道の広い用法を覚えるようにすればいい。効率的に学習することが早道なのである。また、古めかしい表現は普通の外国人には不要である。
 以下のリンクから、pdfファイルをダウンロードしていただくとして、簡単な説明を付け加えていくことにする。
gyakusetsu.pdf

T 接続詞と接続助詞

「しかし」と「ただし」の違いについて、某日中辞典を見たら、同一の説明をしていて、これでは中国人の学生が理解できないだろうと思った。「ただし」は条件や例外を加える場合に用いるのであって、「もっとも」にも同様の用法がある。
 逆接の表現を含む内容を、「が」や「けれども」を接続助詞として用いて表す場合には1文、接続詞として用いて表す場合には2文となる。接続助詞「のに」と、接続詞「なのに」のように、語形が若干変わるものがあるのに注意する。
「ところが」は予想外な展開に対する驚きを示す。「にもかかわらず」も似ているが、不条理な状況に対する批判のニュアンスを含むので、自分自身について言及するときには用いにくい。相手への批判に侮蔑のニュアンスが加わる場合には「くせに」が用いられる。
「ながら(も)」と「と言いながら」は類似しているが、後者は発言の矛盾を指摘する場合に用いられる。「ものの」はそれ以上、事態か進展しない場合に用いられる。「といっても」は前件から予想される事態に対し、後件の程度が低い場合に用いられる。「ものを」は相手への不満や残念な気持ちを、含意として表す言いさしの表現である。


U 仮定条件と確定条件

「のに」と「ても」の違いも混同されやすいが、「のに」には「確定条件」の表現しかないのに、「ても」には「確定条件」のほかに「仮定条件」の表現がある。
 また、「のに」にタ形が上接して、いわゆる「反実仮想」、現実に反する状況を想定する表現もある。


V 階層性

 南不二男は従属節の独立度を、階層的に分類している。独立度が低い順にA類、B類、C類と分類している。逆接の表現に限って言えば、「ながら」がA類、「のに」「ても」はB類で、「けれど」「が」がC類となる。例文で示した「のに」「ても」の方が、「けれど」「が」より独立度が低い。したがって、独立度が低い「のに」「ても」は、独立度が高い「けれど」「が」の節の中に、入れ子状に組み込まれるのである。


W 「なくて」「ないで」「ず(に)」

 ここでは併せて、「なくて」「ないで」「ず(に)」の違いについても、触れておくことにする。これらは用法から、「なくて」と、「ないで」「ず(に)」に二分される。
 まず、活用を確認しておくと、形容詞系では前項がイ形容詞でもナ形容詞でも、「なくて」の形を取る。一方、動詞では「なくて」「ないで」「ず(に)」のいずれの形も可能だが、用法によって使われるものが異なってくる。
「なくて」は原因や並列の表現にもっぱら使われるが、「ないで」には幅広い用法があり、大抵は「ないで」を使えば間に合ってしまう。「ず(に)」は「ないで」の用法と重なるが、書き言葉で用いられる。
「ないで」が多用される表現としては、「付帯状況」がある。「否定の許可」「否定の依頼」「禁止」「二重否定」などでも、「ないで」が用いられる。


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