2017年11月25日

宮本研編『ドラマの書き方』(2)

「『東海道四谷怪談』の方法」という副題がついた広末保の文章も印象的だった。その結論の部分を引用してみよう。
「倫理的な善悪を超越したとき、はじめて悪のエネルギーは顕在化されるが、そのためには、弱者はつねに善であるといった基準をナンセンス化する旺盛な喜劇精神を必要としたはずである」
 これは殺された者が怨霊と化すことで、残酷な復讐をなす内容をさしており、そこには素朴な写実主義からすれば、笑うしかないような作者のユーモアが隠されているというのである。
 椎名麟三の「演劇と小説」は、見過ごされがちな両ジャンルの違いを、的確に指摘してくれている。演劇の最大の特徴は次の点にある。舞台で表現されているのはすべて現在で、そこには目に見える空間があり、観衆への働きかけも容易であるということである。
 それに対して、小説は回想といった形を取ることが多く、表現されている内容も、過去の思い出や将来への希望など、いずれも現前しないものが多い。想像力に訴えるという面では、小説は読者に多くの努力を強いるが、それだけ大きな自由を与えることでもある。
 文学作品を舞台化する際には、こうした根本的な視点の変更が不可避なため、舞台芸術として完成させるには、作品を根本から再構成する必要も出てくる。舞台化された作品が原作に忠実な余り見劣りがしたり、平凡な小説が名監督の手で傑作に変身するのも、今述べたことと無縁ではないかもしれない。

参考文献
宮本研編『ドラマの書き方』(明治書院)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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2017年11月24日

宮本研編『ドラマの書き方』(1)

 宮本研編の『ドラマの書き方』という本を読み終えた。以下に記すのはその読書メモの類である。同書の中でまず主張されているのは、小説と同様に台本を書く場合も、型にはまった作品にならぬように心しなければならないという点である。
 多くの作家や脚本家の文章の中で、「ミュージカルス」という安部公房の文章が、とりわけ僕の記憶に残った。「現実に対する主体の優位を確保」するには「遊びの精神」が必要なのに、それが軽んじられている日本では、作品が「現実に対する主体の敗北と劣勢を感傷的にムード化したメロドラマ」に流れがちだというのである。
 創作という行為自体が、「現実に対する主体の優位」だとする点は、今まで余りにもないがしろにされてきたことではないか。それは明治期の素朴な写実主義の影響から、多くの人が抜けきれていないことと関連があると思う。そうした立場からすると、江戸時代の歌舞伎などは、荒唐無稽な内容ばかりが目立つ、非文学的なジャンルと見られかねない。(つづく)

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高野敦志編『高野邦夫詩撰』(pdf)

 高野邦夫は昭和3(1928)年、現在の川崎市幸区に生まれました。太平洋戦争末期に予科練に入隊。戦場に送られる前に終戦を迎えました。戦後は国語の教員を務めるかたわら、詩を書き続けました。日本詩人クラブや俳人協会の会員でした。平成9(1997)年、敗血症で亡くなりました。享年68歳でした。生前刊行された父の詩集、および遺稿から選び出した詩篇を『高野邦夫詩撰』としてまとめました。今回はパソコンでも簡単に開けるpdf版をアップロードいたします。パソコンに保存してからご覧下さい。
 なお、iTunesでダウンロードした場合、マイミュージックの下にiTunesのフォルダがあり、iTunes Music、その下にpodcasts、さらにその下のフォルダにpdfファイルは入ります。ダブルクリックすれば、Adobe Readerですぐに読めます。フルスクリーンモードで表示すると、モニターでも読みやすいと思います。下のリンクをクリックして下さい。
kunionoshi.pdf

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。

以下に高野邦夫の著作を挙げます。

詩集

『寒菊』(1962 五月書房)
『氷湖』(1978 昭森社)
『燦爛の天』(1980 昭森社)
『定時制高校』(1982 昭森社)
『川崎』(1983 昭森社)
『修羅』(1984 昭森社)
『彫刻』(1985 昭森社)
『曠野』(1985 芸風書院)
『銀猫』(1986 昭森社)
『日常』(1987 昭森社)
『川崎(ラ・シテ・イデアル)』(1989 教育企画出版)
『短日』(1991 吟遊社)
『峡谷』(1993 吟遊社)
『鷹』(1994 吟遊社)
『敗亡記』(1995 吟遊社)
『廃園』(1998 遺稿 吟遊社)

句集

『高野邦夫句集』(1987 芸風書院)


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