2017年08月15日

ぼくはネコなのだ(52)

 いい加減、ぼくは腹が立った。兄貴を小学校に連れていったばかりに、しっぽを持って振り回されるし、こちらがどれだけ心配していたかも知らずに、えさに釣られてまたのこのこ出かけていこうというのだから。
「兄貴は食べるために生きているんだろ!」
「何言ってる。おまえこそ、愛想がないから何ももらえなかったんだ!」
 ぼくは我慢ができなくなった。いつものように、兄貴はこっちに来いとしっぽを振った。それを合図にぼくは兄貴に飛びかかった。普段ならそこで首根っこをつかまれ、投げ飛ばされるところだったが、いつの間にか兄貴と互角の体になっていた。
 人間たちは二匹のけんかを面白がってる様子だった。とくに、髪の短いおじさんは手をたたいて喜んでいる。ぼくは兄貴を追い回した。うちの中を何周回ったろうか。しまいには、兄貴は紙袋の中に逃げ込んだので、ぼくは袋の口を後ろ足で押さえると、兄貴を袋の中に閉じ込めた。身動きできなくなった兄貴の頭やお腹を、思う存分なぐってやった。すると、椅子に座っていたおばあさんが、変な歌をうたいだした。
「山寺の和尚さんは、毬(まり)は蹴りたし毬はなし。猫を紙袋(かんぶくろ)に押し込んで ポンとけりゃニャンと鳴く……」(つづく)

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2017年08月13日

男はつらいよ 寅次郎忘れな草(第11作)

 寅次郎とさくらの父の二十七回忌の法事をやっているところに、寅次郎がひょっこり現れる。御前様が読経している最中に、つまらぬいたずらをして、とらやの人たちを爆笑させ、法事を台無しにしてしまう。ちょっと気になったのは、御前様が「般若心経」を唱えていたことだ。柴又帝釈天の題経寺は日蓮宗の寺院だから、「法華経」以外の経典を唱えることはない。玉に瑕なので、ちょっと残念な気がした。
 喧嘩して飛び出した寅次郎は、網走で売れない歌手リリーと出会う。一見あばずれといった風体の女で、旅をしながらあちこちのキャバレーで、酔っ払いを前にして歌っている。歌うことが好きで、夢を見ながら生きているが、現実にはつらいことが多い。夜汽車の窓に明かりがともっていると、そこには平凡ながらも幸せな生活があるんだとつい涙が出てしまう。フーテンの寅さんの女版みたいなリリーである。たちまち二人は意気投合してしまう。
 酪農家に住み込みで働き、堅気に生きようとした寅次郎だが、熱射病に倒れて柴又に戻る。そこにリリーが現れる。寅次郎の女性遍歴について、とらやの人たちが話していると、リリーは「初恋の相手は寅さんだ」と言い出す。とらやの人たちの温かいもてなしに、リリーは感動するのだが、根はいい女でも寅さんの女版である。つらい出来事があった夜、泥酔してとらやを訪れ大騒ぎ、なだめる寅次郎に「話を聞いてくれない」と啖呵を切って飛び出していく。寅次郎がふだんやってきたことである。
 リリーは歌手をやめて、寿司屋の女房の座に落ち着くが、本当は寅さんの方が好きだったとさくらに洩らす。寅次郎との相性が抜群なリリーは、今後も寅次郎と関わることになる。

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2017年08月12日

ネルヴァル Nerval の短編「緑の怪物」(ePub)

 19世紀フランスの狂気の詩人、ジェラール・ド・ネルヴァルの短編「緑の怪物」を新訳でお送りします。夢と現実の間をさまよいながら、シュルレアリスムの先駆的作品を生み出し、20世紀になってから再評価されたネルヴァルですが、今回紹介するのは、ネルヴァルの狂気の側面がうかがえる怪談です。
 作中には多数の固有名詞が出てきますが、余り気にせずに読み進めて下さい。注釈は最低限にとどめました。以前、「緑の怪物」の要約をブログに載せましたが、今回はガリマール社版の『ネルヴァル全集』第3巻を用いて全訳しました。なお、筑摩書房の『ネルヴァル全集』第4巻には、中村真一郎訳の「緑の怪物」が収録されています。
(注、ジェラール・ド・ネルヴァルをフランス語で表記すると、Gerard de NervalのGerardは、本来ならeにアクサン・テギュ accent aiguが付きますが、文字化けが発生するため、アクセント記号は省いてあります。)

 以下のリンクから、拙訳をダウンロードして下さい。
lemonstrevert.epub

 iTunesからダウンロードする場合は、ミュージック→iTunes→iTunes Music→podcasts→当該のフォルダの下に、ファイルが入ります。
 IEでダウンロードした場合は、拡張子をzipからepubに変えて、下記のアプリでご覧下さい。

 ePubはiOSのiPadやiPhoneなどで読むのに適した形式です。iBooksなどでご覧下さい。Windowsでは紀伊國屋書店のKinoppy(http://k-kinoppy.jp/for-windowsdt.html)が、最も美しくePubのファイルを表示します。

 ブラウザからePubを開く場合、Edgeならプラグインなしで読めます。Googleのchrome(https://www.google.co.jp/chrome/browser/desktop/index.html)なら、プラグインのReadium(http://readium.org/)をインストールして下さい。
 firefox(https://www.mozilla.org/ja/firefox/new/)にもプラグインのEPUBReader(https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/epubreader/)があり、縦書きやルビなどにも対応しています。

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。

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