2020年09月14日

エリック・ドルフィー Eric Dolphyの《Out To Lunch》

 エリック・ドルフィーの演奏で、僕が好きなのは、ジョン・コルトレーンの《ライブ・イン・ストックホルム 1961》に収められたMy Favorite Thingsでのフルートの演奏だ。コルトレーンの呪文のようなサックスの反復の中で、ドルフィーはフルートによる音の宇宙、すがすがしい囀りの極致を生み出す。
 ジャズでフルートを演奏すること自体、まれである。36歳の若さで逝った天才の死の四ヶ月前に録音されたのが、今回紹介するアルバムである。恐らく、ドルフィーのアルバムで最も知られているものではないか。
 アルバムのタイトル、Out To Lunchからして度肝を抜かれる。酒や麻薬で正気を失ったという意味である。的を射た名づけではないか。ジャズというよりは現代音楽に近い。聞き手の期待を裏切り続ける、異様な音の連続。
 1曲目のHat And Beardは帽子とあごひげ。意味を否定するタダの詩みたいな音楽だ。こんな曲、今まで作った奴はいないだろうという自負が感じられる。ちょっと聴いただけで、ドルフィーの演奏だと分かる。
 2曲目のSomething Sweet Something Tenderは、ちょっと甘く、ちょっと優しい。1曲目と比べれば、そんな感じもしないでもないが、ロマンチックなムードも泥酔して、視覚も聴覚もおかしくなったような。ダリのシュールな絵を連想させる。
 3曲目のGazzelloniは、ローマRAI交響楽団の首席奏者セヴェリーノ・ガゼロニにちなんだタイトル。指揮者がオーケストラに指示しているさまを、揶揄しているような演奏。フルートを吹いているのがドルフィーか。観客のことなどお構いなしに、自分の好むままに演奏させてもらうといった姿勢だろう。
 4曲目はアルバムのタイトルであるOut To Lunch。ここに至るまでに、聴いている方もすっかり酔って、ドルフィーの奇妙奇天烈な世界に慣れてくる。音から連想されるイメージにひたる余裕が出てくる。理解などできない。意味なんかないのだから。音そのものを味わえって、ダダの世界だな。
 5曲目はStraight Up And Down。背筋をまっすぐに、なのか、山腹がまっすぐに切り立っているのか。恐らく、タイトルなんか曲と関係ないんだろう。他と区別するためのマークに過ぎない。その意味でこのアルバムすべてが、非現実的な音の連続で、Out To Lunchなのである。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:44| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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