2020年06月29日

デフォーの『ペスト』に関して(3)

 ペストから逃れるには、感染が広がる以前に、いち早く地方に避難するのが一番だが、疎開が遅れた場合には、かえって、地方に感染を広げることになる。そのため、人の移動ばかりでなく、物流の移動も滞るようになる。失業者があふれることで、経済にも重大な被害を与える。
 一番衝撃的だったのは、死者を車で運搬して、大穴に投げ込む場面である。葬儀を行う余裕もなくなり、投げ込まれた遺体ははだけて、死者の裸体は剥き出しになる。気絶していた者も、死んだと思われて墓穴に投げ込まれる。死体を運搬していた者が、車ごと穴に転落したりする。激痛と絶望のあまり、生きたまま遺体の穴に、身を投げる者まで現れる。
 ロンドンを死の恐怖で震え上がらせたペストは、ある日を境にして終息に向かう。免疫が獲得されたのだろうか、それまでは死の病だったものが、治癒する者が大半になる。こうなると、それまでの反動で、感染に関する注意を怠るようになる。そのために、不用意に感染して命を落とす者も出てくる。
 このように、デフォーの『ペスト』は疫病がもたらす現象を、網羅的に描き出している。見聞きしたことをもとに描いているからで、ナチスへのレジスタンスが発想の動機となったカミュの『ペスト』と比べて、迫真性でははるかに上を行くのである。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:07| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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