2020年03月29日

箱根にあった駒ヶ岳(5)

 駒ヶ岳山頂の野性味あふれる風景に、心を奪われていたわけだが、十数年前に訪れたら、全く異なる光景が広がっていたはずだ。現在はロープウェイで登るしかないわけだが、かつてはケーブルカーも山頂まで引かれていた。
 ケーブルカーの頂上駅は、山頂の散策路を進んだ東の端にあった。現在は柵があって下りられないようになっている。上空からでなければ、まさかこの下に駅があったとは分からないだろう。
 さらに箱根元宮の前に広がる草原だが、かつては巨大な屋外スケートリンクと、管理棟やレストランが設置されていた。ケーブルカーの登り口駅は、湖岸から離れた山麓にあり、廃線後は車の通行も禁止されている。当時は新宿駅からケーブルカーの登り口まで直行バスがあり、駒ヶ岳山頂のスケート場に観光客を運んでいたのだ。
 スケート場は閉鎖されてしばらく、廃墟として放置されていた。壁は落ちて天井も抜け、スケート靴は棚の中に放置されていた。レストランのメニューが、無造作に床に放置されていた。それら一切合切が処分されて、駒ヶ岳山頂は絶景を取り戻したのだった。

 富士山をいつまでも拝んでいたかったが、昼食をとるために山を下ることにした。箱根園に着くと、辺りは押し寄せた観光客でごった返していた。外国人がいなくなった箱根を、日本人が取り戻そうとしていた。
「大涌谷に向かう道路は、大渋滞が起きていますよ」
 みやげ物屋の店員が教えてくれた。観光バスの職員も、バスが時間通りには全く運行できていないとこぼしていた。そこで、昼食を済ますと、桃源台まではバスで出て、ロープウェイで大涌谷に向かうことにした。
 運良くロープウェイは空いていた。窓から見下ろすと、大涌谷に向かっている自家用車が、駐車場には入れずに大渋滞を起こしていた。姥子では誰も下りず、大涌谷にほどなく到着。十五年ほど前、日本語学校の学生を引率してきたことがあったが、それ以来だった。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 04:55| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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