2019年08月29日

ほったらかし温泉の前に(3)

 そこに『犬神家の一族』のポスターが貼ってあったので、友人はぎょっとしていた。立ち尽くしている様子を、学芸員らしい女性は、怪訝な表情で眺めている。
「彼は子供の頃、映画館に『犬神家の一族』の看板があって、怖くてその通りを避けて、遠回りしていたんですよ」と僕が言うと、友人は「小学生だったから怖かったんですよ。白いマスクの顔の看板がすごく大きかったから」と説明している。
「そりゃ面白い。来た人に話したい」と笑っている。案内の女性のインパクトと、普段は寡黙な友人の反応が面白かった。
 当時は横溝正史の小説が、次々に映画化されていた。『犬神家の一族』『八つ墓村』『悪魔の手毬唄』『獄門島』など、怪奇な雰囲気が漂う探偵映画が、マスコミを騒がせた時代である。横溝正史や江戸川乱歩の探偵小説の特徴と言えば、純粋な推理小説とは異なる、怪奇や耽美的な嗜好である。
 これに関しては、日本の探偵小説が、遠くはポーやドイルを父とし、谷崎潤一郎を母として生まれたという経緯を、中井英夫が谷崎の『人魚の嘆き・魔術師』の解説で書いていた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 09:30| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: