2019年07月23日

ぼくがイヌ派だった頃(12)

 ところで、手前のうちは地所が広かった。大正生まれの五十代の、何でもはっきり言うおばさんが、ご主人と大学生くらいの息子たちと暮らしていた。おばさんはいつも頭にタオルや手ぬぐいを巻いていた。
 小学校から帰ってくると、おばさんはよく洗濯物の取り込みをしていた。大きな声で「ただいま」とぼくが言うと、それに負けないくらい大きな声で、江戸弁ぽく「おけえり」と言うのだった。
 あるとき、おばさんが旅行のみやげだと言って、博多人形を贈ってくれた。日本髪に結った、浮世絵から抜け出してきたみたいな人形だった。母はおばさんが気前いいのに驚いていた。
「増築の工事するのに、挨拶だって卵1パック持ってくるような人なのに」
 そのうちでも犬を飼っていた。白くて毛の長い中型犬だった。ぼくと母がサブを近くの公園に、狂犬病の予防注射のために連れていった。接種が済んで帰ろうとしたとき、公園の手前でおばさんと会った。白い犬を連れていた。
「うちの犬、病気なのよ。治らないらしいから、保健所に引き取ってもらおうと思って」(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 04:47| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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