2019年07月15日

ぼくがイヌ派だった頃(9)

 あの頃、昭和四十年代はまだ日本は豊かではなかったが、皆希望を抱いていた時代だった。町の中には子供があふれていた。子供のいる家庭、特に男の子がいるうちでは、よく犬を飼っていた。犬は走り回るから、男の子の散歩にはぴったりだった。
 西側のうちも、今ではネコ派になってしまったが、当時は犬を飼っていた。小柄な柴犬だった。ところが、転勤先では犬が飼えないというので、代わりに飼ってくれないかと母が頼まれた。若い頃、実家でも飼っていた母は、大の犬好きだったから、二つ返事で引き受けた。
 ただ、一つ問題があった。名前だった。山田洋次の映画『男はつらいよ 寅次郎と殿様』の中で、とらやに迷い込んできた犬にトラという名前がついていて、寅次郎が怒って一悶着起こす場面がある。母がもらってきた犬はサブという名前だったが、叔母の夫の名前は三郎だった。
「だって、サブって名前がついてたんだから、しょうがないのよ」
 実家に遊びに行った母は言い訳していた。三姉妹の家に入り婿した叔父は、寅次郎とは違って温和な人だった。犬の名前で機嫌を損ねるようなことはなかったので、笑い話のように話していた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:23| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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