2019年01月20日

ぼくがダライラマ?(65)

 立ち上がった摂政は、新郎・新婦の前に立った。二人がひそかに愛し合い、親の反対を押し切ってまで結ばれようとしたという逸話を披露した。そう言いながら、目頭を押さえる摂政を見て、何という虚言の天才だろうとあきれてしまった。人をあざむくためには、まず自分自身をだます必要があるのか。これはきっと、ぼくに対する当てつけなんだと思った。
 我に返ったとき、脇にひざまずいていた侍従に促された。言われるままに、今度はぼくが、新郎新婦の前に立った。祝福のための白い布、カタが手渡され、新郎と新婦の首にかけるように言われた。今度はぼくが、ダライラマとして祝辞を述べなければならない。
「よろしく、よろしく」と言いかけたが、あとの言葉を続けられなかった。若い貴族の動転はいや増していった。
 凍りついた貴族の首にカタをかけた。相手は答えられず、ただ深々と礼をするばかり。今度は新婦にカタをかける番である。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:29| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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