2019年01月19日

ぼくがダライラマ?(64)

 その時、はらわたを揺るがすホルンが、夜叉羅刹をも震え上がらせるほどの、凄まじい重低音で鳴り渡った。この婚礼を妨げられる者は、もはや誰もいないと宣告するかのように。それを祝して高らかに、銅鑼や大太鼓が打ち鳴らされると、会場はあふれんばかりの音の渦に包まれた。
 摂政はせわしげに立ち上がると、もったいぶった口振りで祝辞を述べた。この婚礼が諸仏・護法尊の意にかなったものであり、ダライラマの賛意と力添えによってなされたと法螺を吹いたばかりか、目の前でひざまずくと合掌した。
 ぼくは抑えていた憎悪の念が、じりじりと胃の辺りを焼いていくのを感じた。手足からは血の気が失せて、めまいをこらえるために、ひじ掛けに置いた拳を握りしめた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 12:55| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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