2018年06月13日

阿蘇は生きている(4)

 阿蘇ユースホステルに泊まった。風呂に浸かっていると、若い子が声をかけてくれた。年齢の差も忘れて楽しくおしゃべりした。とはいっても、この時の自分はまだ30ちょっと過ぎだったわけだが。同室には都内の日本語学校に通っていた台湾の若者もいた。帰国する前に九州と北海道を旅行すると言っていた。
 翌朝、台湾の若者陳さんと草千里に向かった。バスで山道を上っていると、同室だった学生二人が歩いているのが目に入った。ユースホステルの宿舎と食堂の間をうろついてた犬もいたので、バスの中から手を振ると応えてくれた。
 昨日も来た草千里に降り立った。天気は相変わらず曇。からっと晴れ上がってくれない。どうしようかと思った。陳さんは歩いて阿蘇山西駅まで行くらしい。写真を撮って別れを告げると、陳さんは「また会うよ」と答えた。「再見」を直訳したのだろうか。
 僕は阿蘇火山博物館の向かいにある「オルゴール響和国」という小さな博物館に入った。その地下には、近代ヨーロッパの大型オルゴールの名品が展示してあり、典雅な響きを実際に聞かせてもらった。大きな洋画が飾られた内部は、さながら貴族の館といった趣だった。ゼンマイ仕掛けで、鳥かごに入った剥製の小鳥が、嘴と首を動かしながら、ふいごの力でさえずるからくりには舌を巻いた。
 上の階には、人の拍手で反応する人形のオルゴールなど、現代の家庭向けの機械が並べてあった。オルゴールというものは、レコードが生まれる前の自動演奏機ぐらいにしか考えていなかったが、自然の神秘を模して人造人間、ゴーレムを造ろうとした危険な情熱につながるものを感じた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:19| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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