2018年06月04日

ぼくがダライラマ?(47)

 その後、猊下が夕暮れにポタラ宮の裏、龍王を祀る神殿の池の前で、ダムニェンを弾いていらっしゃるという話を、侍女たちがしているのを耳にして、もう我慢ができなくなりました。わたくしは侍女に手引きをさせて、物陰から弾き語りを聴いておりました。幼い日にふるさとから連れ出され、長い間僧院で過ごされてきた猊下のお気持ちが、胸に伝わってまいりました。
 自分の罪深さは感じております。わたくしは自身の気持ちに忠実なあまりに、猊下を悩ませている自分が恐ろしくなります。ただ、ただの一度でよろしゅうございます。猊下と一対一でお話ししたいのです。次の満月の夜、もし東の山の頂から、白く明るい月が昇りましたら、日付の変わる時刻に、あの池の前でお待ちしております。
 とうとうこんなことまで書いてしまいました。女人はこの身のままでは成仏できぬものだと聞いておりましたが、ようやくその意味が分かりました。観音菩薩の化身であられる猊下に、こんな手紙を差し上げるわけですから。もし猊下のお気持ちを損じるようなことがございましたら、どうぞ焼き捨ててくださいまし……。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:01| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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