2018年05月07日

番外篇の「虹をつかむ男」(2)

 もう一つの特徴としては、映画の名作を多く映像の形で引用している点である。ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『ニュー・シネマ・パラダイス』、アンリ・コルピ監督の『かくも長き不在』、ジーン・ケリーおよびスタンリー・ドーネン両監督による『雨に唄えば』、小津安二郎監督の『東京物語』など。ちなみに、その作品の父親役は、『男はつらいよ』シリーズで御前様役を演じた笠智衆である。あの独特な、淡々とした語り口は『男はつらいよ』になくてはならない存在だったが、シリーズ終了前の1993年(平成5)に亡くなっている。ここでも二重写しの異化効果を、山田監督は狙っているのだろう。
 最後の場面で、活男は気に入っていた亮を、東京に戻すために首にする。別れの前に二人で見たのは、『男はつらいよ』の第一作。渥美清も、妹さくら役の倍賞千恵子も若かった。この作品は『男はつらいよ』シリーズに命を捧げた俳優、渥美清に対する挽歌であると言えよう。
 懐かしいとらや、おいちゃん、おばちゃん、タコ社長、舎弟の登、最初の恋人役である冬子の姿も映った。これを見ていた吉岡秀隆は、もう二度と『男はつらいよ』シリーズに出られないんだと思い、涙がこみ上げて止まらなかったという。長年シリーズを見てきたファンにとっても、もうあの世界は味わえないんだという思いで、胸がいっぱいになったことだろう。
 なお、西田敏行の活男と、吉岡秀隆の亮の心温まる関係が好評だったのだろう。『虹をつかむ男は』はもう一作制作されることになる。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:48| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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