2018年03月31日

ぼくがダライラマ?(42)

「これを描かせたのはどなただと思います」
「前のダライラマ五世とでも……」
「猊下は何でもご存じだ。前世になされた他の行いも、日を置かずして思い出されることでしょう」
 摂政はダライラマの秘密を明かすことで、ぼくを操ろうとしているのではないかと思った。ダライラマを頂点とする新派の密教では、現世で悟りを得ることができないことを、五世自身は知っていて、密かに古派の密教を修行していたに違いない。その秘密を民衆に知られぬように、ポタラ宮裏の池に囲まれた神殿に封印していたのではないか。
 摂政は謎めいた笑みを浮かべると、こちらの動揺を顔色から読み取ろうとしていた。ぼくの先祖が伝えてきた秘法を、自分は知ることができない矛盾を思った。古派の密教と言えば、お父さんは牧人として働きながらも、行者として村の祈祷に携わってきたのだった。ここに連れてこられなければ、ヤクや羊の世話をしながら、あの壁画に描かれた体位で、どんなヨーガを行えばいいか教えてもらえたはずなのに。
「猊下、ここで見たことは決して口外されてはなりません。猊下の師であらせられるパンチェンラマにも、お尋ねになってはなりません。猊下がそれにふさわしい境地に達された暁に、真理は自ずと明かされることでしょう」(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:18| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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