2018年01月30日

筒井康隆の『文学部唯野教授』

 大学教師のイメージを破壊するドタバタ劇と、現代思想の講義を結合した型破りな作品である。パターン化した枠組みに囚われない実験的な作品。大学教師の裏側を、誇張してコミカルに描いているが、研究室でふしだらな行為をしていたり、糞尿譚まがいの描写があったり、エイズの感染まで笑いの対象にしているため、人によっては不快感を抱くかもしれない。
 作者は大学関係者から得た情報をもとに、脚色して作品を描いたらしい。でも、こんな教師は今でも存在するのだろうか。わざと権威付けするみたいに、十五分遅れで授業を開始したり、やたらと休講が多かったりは昭和時代のお話で、今は時間いっぱいに授業するし、休稿したら補講しなければならない。おまけに、学生から授業アンケートで評価されるしで、この作品に登場するような教師はほとんど淘汰されてしまったのではないか?
 早治大学、立智大学とか、モデルの大学を推定させたいのか攪乱したいのか、これも作者によるトリックなのではないか。唯野教授は教師生活のかたわら、野田耽二のペーネームで小説を書いている。つまらんもん書いてる暇があったら、論文を書けという評価は、実際にもあるんだろう。芥兀賞に受賞して、創作活動がばれるのではとびくびくしている。
 唯野教授の講義では、ロシア・フォルマリズムから現象学、記号論、構造主義にポスト構造主義まで、分かりやすく説明されている。ただし、読者は文字で読んでいるから、分かりやすいのである。昔の大学教師は、講義ノートを見ながら、ひたすらしゃべりまくっていた。昔の学生はノートを取るのが一苦労だった。分野にもよるのだろうが、今は授業用のハンドアウトが配布されないと、学生から不満が出るだろう。
 外国文学の概論などは、こうした講義形式を取るわけだが、外国文学の授業の大半は訳読形式で、ひたすら辞書を引き続け、外国語を日本語に訳す作業が延々と続く。唯野教授のような講義ばかりと思ったら大間違いで、辞書引き続けるのが嫌いな人間は、外国文学や哲学の専攻に進んではいけない。

参考文献
筒井康隆著『文学部唯野教授』(岩波書店)


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posted by 高野敦志 at 04:11| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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